第20話 リビングアーマー反省中

 そうか……すまなかった、そう言ってそのまま死霊騎士リビングアーマーは土下座し続けた。


――引き継ぎレオ目線です。


 私の十歩くらい後ろから死霊騎士リビングアーマーがついてくる。地図を読み返して、三又を左に曲がると五歩くらい後から死霊騎士リビングアーマーがついてくる。


 茂みから一角兎ホーンラビットが飛び出してきて、咄嗟とっさに転がって避けると、目の前にドサリッと肉と角に変わった塊が落ちてきた。

 兎って言っても一角兎ホーンラビットは大型犬くらいはある。

 それを目にも止まらぬ投石で撃ち落としたらしい。


「ねぇ、ねぇってば!」


 言葉が刺々しくなるのも仕方ないよね?


「……驚かしてしまったか?」

 

 腫れ物に触るような口振りに余計に腹が立つ。


「そりゃビックリするよ、アンタが先に歩いてよ。後ろから誘導するからさ」


「ああ、そうだな、そっちの方が安全だ。そうしよう、そうしようとも」

 と嬉々ききとして近づいて来るが、近ずきすぎたと思ったようで気がとがめたのか、そろりそろりと追い抜いていく。


「しばらくまっすぐだよ。この先に茂みがあるから気をつけて、あ、さっきの一角兎ホーンラビットが出るからね」


 九層の地図(複写したの)を指でなぞりながら確認する。

 九層は光苔が繁殖していて常夜灯くらいの明るさはある。

 とはいえ細かいメモなんか見えないから、出現する魔物のマークと分かれ道の進路なんかを、針でつついてつけた凹凸を頼りにナビする。


 視線を前に戻すと死霊騎士リビングアーマーの広い背中がある。

 悪意とか害意は微塵も感じられないんだけど、警戒は必要だ。


「体の調子はどうだ?」


 と背中越しに聞いてくるから、なんの話? と言いかけてハッとする。

 そういえば渇きが癒えている。

 頭から水を被ったからべちゃべちゃだったはずが、体に浸透するように水が消えて、服も乾いてきている。


 これはもしかして回復水?

 そんなバカな。一般家庭でも病気になった時くらいしか飲めないし、一瓶で銀貨一枚もする。

 いくら死霊騎士リビングアーマーが不思議なスキルを使えるって言ってもありえないよ。

 

 銀貨一枚といえば黒パンが百個も買える。そんなのを行水じゃあるまいし、頭からたっぷりかぶったとすれば気が遠くなりそうな贅沢だ。

 とりあえず聞いてみることにする。

 

「ねぇ、さっき私にぶっかけたやつ。あれは回復水なの?」


「ん……? そうだが?」


 めまいがしてきた。


「それ……もっと出せるの?」

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