第18話 リビングアーマーやらかす

――――引き継ぎショーカン目線です。


 ただ今第九層……らしい。


「とりゃっ」

 

 ここでも豚野郎オークが湧いてきて、近づく鼻から肉と魔石に変えてやる。


 獲物オーク肉と皮銭の元に変わってくれるのは良い。

 だが、わずかな水しかってない彼女レオがだんだんと元気がなくなっていくのが気にかかった。


 俺? なぜか乾きを感じない――死霊だし。

 

 だが彼女レオは人間で少女だ。

 人は水分を取らないと四、五日で死んでしまう。 

 なんとかしてやりたいが今のところどうしようもない。


「次から次に湧いてでやがって」


 腹立ち紛れに石を拾うと湧いて出てきたオークの頭に叩きつけた。


「プギェ……」


 断末魔の鳴き声をあげて肉と魔石にかわると、また胸部の鎧が開き、どんどん収容してくれる。

 いつも間にか全自動オートになってるんですけど。


(どうする? このままだとレオは干え上がっちまう。水分になるものはないか?)

 

 目の端に点滅していたカーソルが、視界の右から左へと走る。


 

『◯オーク皮  20枚

 ◯オーク肉  19個

 ◯オーク魔石 19個

 ◯ミノタウルス皮と肉 一個


 亜空間イベントリの在庫を表示してくれている?


(ーーーじゃないんだよ、レオにらせる水はねぇか?)


 と考えていると、動くのをやめてしばらく点滅していたカーソルが、また動き始める。


『このアイテムを別のアイテムに交換しますか?』


 なん……だと? 交換できるのか?

 神かよ、この空間収容イベントリ!?


 驚きつつも彼女レオを見やると、唾液で乾きを癒そうと苦しげに喉を上下させている。


(水だ、水と交換したい)

 と念ずると、

『どのアイテムと、どの水と交換しますか?』

 と出てくる。わけがわからずにしばらく眺めていると点滅していたカーソルが走り出した。


『◯オークの皮→ 洗浄水……汚れを落としやすくする

 ◯オークの皮と肉→ 岩清水……美味しい水

 ◯オークの魔石→回復水……回復を早める(若干回復)

 ◯――――』


 神かよ、この空間収容イベントリ!? (二度目)

 

「オークの魔石を回復水へ交換、ポチッとな」

 

 ◯の部分に✔︎印が入ると、何かが胸に迫り上がってくる感覚がした。


「待てよ……容器は?」


 そこまで考えてなかったぁぁぁ――ッ。

 

 焦る俺に疲れ切った顔のレオが目を向ける。

 

「容器って?」


「レオ、すまんっ」


 というそのままレオの肩を固定して、胸部の鎧に顔を近づけた。


 ブシャ――ッと回復水が噴き出す。


「んがっ!?」


 女子にあるまじき悲鳴が上がって、濡れ鼠になったレオがそこにいた。

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