第17話 リビングアーマーは反省する

―――ショーカン目線です。

 

 ミノタウルスの装備とドロップ品の肉と皮を収容すると、レオの元へ急ぐ。


 今回はやばかったぁ――流石さすがに死ぬかと思った。(死霊だけど)

 が、なぜか恐怖を感じなかったし、あんな岩も楽に投られるくらい力が強くなってる。

 どうやら俺は、本当に異世界に転生し別人? になったようだ。(今さら)


「うぅむ……」


 どうやら、これから俺は死霊として生きていかねばならないようだ。(死んでるけど)


 どうするよ?

 落ち着け俺氏。ちょっと整理しよう。

 

 まず俺はなんらかの条件を満たせば人間として再生することができる。

 次にレオと出会い、冒険者という仕事で日銭を稼げるのはわかった。後はこの世界の足りない知識はレオに教わりながらなんとかなる――ん?

 

 待てよ、ちょっと都合良すぎないか?


 早くに両親を亡くし病の弟のために冒険者危険な仕事をして糊口を凌いでいた彼女が。

 給金をケチる貴族の三男だかに、仕事をさせられた挙句、地獄ダンジョンに置き去りにされた彼女は。

 

 もう誰も信用もしたくないし利用されたくもないんじゃないか?

 俺ならそう思うぞ?

 

 俺が彼女を守り無事に帰す使命に燃えていたが、我が身のこととなると当てにしてやしないか?

 

 ――そこに正義はあるのか?

 それは彼女レオを利用した男爵の三男と何が違う? 前世の他人を利用して安給料でこき使うことを『経営』とぬかすバカ息子と何が違う?

 

 前世の本社勤めのとき、愚痴を言う後輩に

『それが人間ってやつで、資本主義ってもんだ』

 わかった顔をして語ったこともある。

 

『自分のために言ってるだけじゃないんですか?』

 と冷笑した後輩は会社を去っていった。


 図星だよ。

 そして俺はまた自分のために彼女レオを利用しようとしていた。


 危険地帯ホットスポットの出口に近づくと、彼女レオはうずくまっていた。

 小さく儚げにうずくまる彼女は、本来なら守られるべき年代なはずで――誰かに利用されて良い存在じゃなかったはずだ。


「な、なぁ、大丈夫か?」


 俺はオロオロしながらフェイスガードを上げて、この守られるべき存在に狼狽えてしまう。


「ちょっと気持ち悪くなっただけ」

 と強がる彼女レオの、立ちあがろうとしてよろけた掴んで支えた時ショックを受けた。

 

 こんなにも細い腕をしてたんだな、と。

 こんな儚げな少女に頼ろうとしていた自分が、とてつもなく恥ずかしくなった。


「す、すまなかったぁ」


 汚い大人の代表として俺は土下座した。

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