第15話 レオと繋がるリビングアーマー

 ミノタウルスへ一抱えある岩を投げつけると、腹へ直撃。


「ブホォウッ」


 と間抜けな声をあげて、魔素をばら撒き消えていった。


 ――――レオ目線です。


「走れっ」と後ろから声が上がった。

 

 その声に背を押されるように、必死に駆けて危険地帯ヒットポイントを抜けたあたりで振り返る。ハァハァとしばらく息を整えると、駆けてきた薄明かりの方へ目を凝らした。

 

 あの死霊騎士リビングアーマーは「ここで足止めする」と私を先に逃してくれたが、鳴り止まぬ地響きにミノタウルスと物騒なことになってるのは間違いない。

 ここは迷宮ダンジョンの第十層。ここを抜けてもあと九層もある。

 とても私だけじゃ、生きて帰れない。彼の生存が私の絶対条件だった。

 

 不安に目を凝らしていると、飛んでは転がり、転がっては駆ける死霊騎士リビングアーマーが見えてきた。

 ジグザグに走ってミノタウルスから逃げ回ってるように見えるが、あれはきっとああやって私が逃げる時間を稼いでるんだ。


 死霊騎士リビングアーマーの脅威度は10、ミノタウルスは倍の20だ。Dクラス(一般的な冒険者)が20人以上で当たらねば、倒せないクラス。

 脅威度が倍違う。

 それは大人と子供ほどもある差で、手数では追いつけない耐久力の差でもある。


 それでも生き残って欲しくて、声を上げるにはミノタウルスに見つかりそうで恐ろしくて。だから私は祈るしかなかった。


『なんかぶつける物わっ?!』


 仕草で彼が何を探しているかわかる。

 さっきみたいに何かぶつける物を探しているに違いない。


「あれと、あそこのと……あ、あれくらいなら?」

 見ると一抱えもありそうな岩が目につく。さっきはゴブリンの頭くらいの岩も投げつけていたから、あれくらいなら投擲できるかも知れない。


「そこ、その先――」

 彼に気づいて欲しくて祈るようにその岩と彼を交互に見る。と、私の中から何かがサラサラと抜けていく気がして、しゃがみ込んでしまった。


「どっせい――っ」

 と掛け声が上がると、彼が持ち上げた岩を叩きつける。


 それがミノタウルスの腹を直撃すると

「ブホォウッ」

 と、間抜けな声をあげて魔素をばらまきながら、肉や毛皮や装備を残して消えた。


「ポチッとな」


 変な掛け声とともに、彼の胸部が開いて瞬く間に吸い込まれて消えたけれど。

 

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