第14話 リビングアーマー投げつける

 とてもじゃないが敵わない、と手にした石を放り出して駆け出した。


「走れっ」


 レオだけでも逃さねば、と声を張る。

 

 見ると、レオはもう狭路の出口に差し掛かっていた。これだけ離れればもう大丈夫だろう。

 

 残るは俺氏。

 食い止めるなんて言った割に逃げ回っている。

 だって武装した牛が2本足で追いかけてくるんですもの!

 


 中盤の雑魚キャラつったのは謝る。

 牛がこんなにおっかないとは思わなかったよ――というわけで絶賛逃亡中なのだが、ガシャガシャと鎧と鳴る鎧の音がうるさくて、後ろとの距離感が掴めない。

 

 チラリと後ろを振り返ると、ミノタウルスが手斧ハンドアックスを振り上げていた。


 勢いをつけてたたろうとしていらっしゃる?!


「だぁぁぁぁ――っ」

 絶叫とともに横へ飛んだ。


 ドスンッと地が揺れ手斧ハンドアックスが地面にめり込む。俺氏、一回転して再び全力疾走。


「ブモォォォ――ッ」


 待てぇっとでも言ってるのか?

 待つわけねぇだろ?


 ガチャガチャという鎧の音に紛れてブンッと風切り音がした気がして、咄嗟に前へ頭から突っ込むヘッドスライディングすると背中を何かがかすった。

 ただそれだけだ。

 それだけなのにタックルを食らったように吹き飛ばされる。


「ぬおっ」


 目の前が地面だか洞窟の天井だかわからないくらいに、視界がごちゃごちゃになり吹っ飛ばされたのがわかった。

 ぬぅぅ――っ、俺氏ピンチ!


 ただ止まってはいけない、これだけは反射的にわかって転がるように走る。


 やばいやばいやばい――何かぶつける物はないか? まともにやって敵うはずがない。


『なんかぶつける物わっ?!』


 視界の端がチカチカと光り、カーソルが現れた。

 走りながら探し物をしたって見つかるはずもないのだが、目の端のカーソルが前後左右に動き回って、ポインターで照らすように光る。


 そのうちの一つがピカリッと輝いて見えた。

『あれだっ』と飛びつくと、一抱えある臼くらいの岩。


 こんなん持ち上がるわけがない。まして投げつけるなんて無理――でも足元に転がせば、ころげさせることくらいはできるかも知んない。


 そう思って駆け寄ると持ち上げてみる。


 あれ? 軽くない?


 あっさり持ち上がったそれを抱えて、振り返るとヤツがいた。手斧ハンドアックスをゆっくりと振りかぶってやがる。

 まるでこれで終わりだ、と言わんばかりで凄くムカつく。


「どっせい――っ」


 と石臼(っぽい岩)を投げつけると、手盾バックラーでガードする間もなく腹へ直撃。


「ブホォウッ」


 と間抜けな声をあげて、魔素をばら撒き消えていった。

 

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