第13話 中盤の雑魚キャラのはずが

「ブモォォォ――ッ」


 と強者の威嚇が迷宮ダンジョンに響き渡った。

 シダ類の下草を掻き分け浮かび上がる巨体なシルエット。


「ミノタウルスだ! ……なんでアレがここに?!」

 レオの慌てた声が聞こえる。

「脅威度7のオークでも死にかけたのに、脅威度20のミノタウルスがなんで?!」


 身長はさっきのオークよりデカいから二メートル四、五十はあるだろう。頭上から押しつぶすような殺気が襲ってくる。

 薄暗いからシルエットしかわからないが、ムッキムキのそびええ立つ牛って感じ?

 

 ミノタウルスなら俺も知ってる。

 それなりに強いキャラとして描かれることが多かった、と思う。


 でも中盤の雑魚キャラ扱いだったから、そうなん? とレオを見ると首を振ってる。


「脅威度20のバケモンだよ、Dクラス(一般的な冒険者のクラス)で20人以上の隊を組まなきゃいけない。Cランクなら10人、単独で討伐なんて聞いたことない」


 ちなみに俺(悪霊騎士リビングアーマー)は脅威度10らしい。つまり俺の倍は強いってわけか。


「肉を投げて。喰らいつけばその隙に」

 と、語りながら肉を目の前にかざす。十分注意を引きつけて遠くへ放るつもりだ。


「貸せ」と肉を取り上げると、左手で来るなよと制しながら、右手で肉を上下に揺らす。

 ミノタウルスも首を上下に揺らすから、注意は引けたようだ。


「そぉれ!」


 と放り投げる途中で『できるだけ遠くへ投げなきゃおとりにならないよな?』と考えがよぎる。

 ちょっと強めにね――と調整したのが悪かった。


 ベチ――ンッと肉塊がミノタウルスの顔面にぶち当たって、ずるりと落ちた。


 やっべ……。

 

「何やってんだよぉ(涙目)」

「いいから、お前は走れっ。ここは俺が足止めする」


 見上げる巨体と対峙しながら石を拾って身構えると、ガサリッとシダ類っぽい葉をかき分け、ミノタウルスの全身が露わになる。


「はんぁあ?!」


 驚き過ぎて変な声が出た。

 左手に手盾バックラー、右手には片手斧ハンドアックス

 胸当ての鎧と前腕には腕巻きの鎧、脛当てまでつけてらっしゃる。ようするにローマ時代の剣闘士グラディエーターのような格好だ。


「なんで武装なんかしてんだよ? 普通、脳筋ゴリ押しキャラじゃねぇのかよッ」


 とてもじゃないが敵わない。手にした石を放り出して駆け出した。

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