第12話 リビングアーマーはスキルを発揮する

 胸部がパカリと胸部が左右に開くと、豚(オーク)の肉を吸い込んでいく。

 魔石も吸い出されるように俺の胸部へ収まった。


「あれ?!」

「へ?」


 俺氏、何をした?

 しばらくポーッとする。そして胸部プロテクターを手で開こうと引っ張ってみる。

 

 無理――以上。


「むぅ――これがスキルってぇのか。サイクロン掃除機みたいだな」


「サイクロンって何さ? それより全部吸い込んじまってどうすんのさ? おとりの肉もなしに危険地帯ホットスポットどう抜けるのさ?!」


 せっかくオークの肉と魔石だったのにぃ、と落胆が半端ない。


「そんな貴重なもんだったのか?」


「そりゃそうだよ。肉は美味いけど、強すぎて討伐できないから滅多に手に入らない。脅威度7ハイリスクだから魔石も肉も高値ハイリターンで取り引きされてるんだ」

 とほほって感じでがっかりしている。


 松坂牛のようなもんか?

 ちなみに前世(もう死んでるなら)では、生まれてこの方(死んでたら一生)食ったことがない。


 はぁぁ――っ とガッカリする。


 また目の端にカーソルが点滅しているのに気づいた。不思議に思ってポチッてみる。


『◯オーク肉 6体 ◯オーク魔石 6個』

 と文字が羅列していく。

 ん? これ収納リストなんじゃね?

 

 試しにオーク魔石の◯をポチてみると、胸部プロテクターが少し開いて、コロンっと魔石が転がり落ちてきた。

 表示は『――◯ オーク魔石 5個』となっている。

 

「……??」

「……大丈夫みたいだぞ」


 と手のひらに載せてやる。


「まさか……まさかこれって空間収納スキル?」

 

「なんだいそりゃ?」

 

「すごいよアンタ、亜空間に物を収納できる凄いスキルだよ」


 ちょろっと昔読んだラノベで見た気がする。もっともこれが現代社会でできたとすると、革命レベルになるのだが。


「とりあえず――行こう」 

 とレオを促すと「嘘だろ?」と言いながら暗い洞窟の奥へと歩き出した。


――――しばらくして。


「あそこが危険地帯ホットスポットだよ。いざとなったらこの肉を放って、注意を引いている間にここを駆け抜ける。さっきの肉頂戴」


「これ?」


 と取り出したオーク肉を、一塊の肉に切り分け手渡してくる。


 見ると迷宮ダンジョンの壁がそこだけ狭まり、狭路になっている。どうやらここが危険地帯ホットスポットらしい。

迷宮ダンジョンの魔素を吸いこみ光に変える『光苔』が、ポゥと照らす薄明かりの中、動きを止めた。

 

「なんかいる」

 気配を察して、レオに告げたのに合わせたように。


「ブモォォォ――ッ」


 と強者の威嚇が迷宮ダンジョンに響き渡った。

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