第9話 リビングアーマー頭を抱える

「ヒデェ話だ……なんて言っていいか――」

 

 そして死霊騎士リビングアーマーはグゥッと肩を振るわせた。

 

――――ショーカン目線です。


 俺が地震に巻き込まれてこんなになった、って言うと

「アンタもツイてない口だね。私とおんなじだ」

 なんて優しいことを言う。


 聞けば、まだ十五歳ってぇのに両親を亡くして、病気の弟と猫を養うために働き出したって言うんだぜ?

 

『少しでも精のつくものを食べさせてあげたいから』

 

 って健気けなげさに、胸がいっぱいになって。

 お姉ちゃんだから当たり前だって話しているけど、まだ自分も子供じゃねぇかよ。

 それだけでも泣けるってぇのに、それをゼニのためにだました汚ねぇやつがいるんだと。


 ふざけんな――俺の中にある何かに火がついた。

 このまま放ってはおけねぇ。


 途中、冒険者とか運び屋ポーターとかわからない単語が出てきたが、そんなもん関係ねぇ。

 この子は守られるべき存在で、利用して良い存在じゃない。

 

「ヒデェ話だ。レオさんよ、俺をそいつに会わせてくれ。たんまり説教を垂れてやる」

 怒りに震えてると、彼女に怯えの色が見えたからトーンを下げて出来るだけ優しい口調に改める。

 

「心配いらねぇよ、俺はキミの味方だ。大人の中にも、ちょっとはマシな奴がいるって思って貰えば良い。とりあえずこの洞窟から出よう」

 彼女が慌てるのもお構いなしに俺はすっくと立ち上がった。


 ブルリッと眩暈めまいが襲ってきた。


『レベルアップしました。進化しますか?』


 ナレーターのような声が頭の中で響き、目の端にチカチカと点滅するアイコンが現れた。

 なんだこれ?


 瞬きすると、画面が展開する。

『アイテムを手に入れました。選択してください』

 アナウンスとともに、アイコンがスクロールしていき文字が浮かび上がる。


『◯頭 ……

 ◯右腕

 ◯左腕

 ◯右足

 ◯左足

 ◯――

 ――――――――』

 

 これアイテムっていうより部位じゃね? なにこれ?

 その時恐ろしい考えに思い至る。


 ひょっとして俺氏。

 死んでる? 昔読んだweb小説が蘇ってくる。

 

 恐る恐る手を見る。うん、普通に動かせる。


 だが、前腕鎧ガントレットを外してみると中身がない。さらにそこから中を覗き込んでみると、空洞が広がっていた。


「な、なんじゃこりゃああ――?!」


 驚きでお口が(ないけど)あんぐりと開いてしまう。

 

 そこで理解できた。

 どうやら俺は条件をクリアして、五体を取り戻さねば人間になれないらしい。


「冗談だろ……」

 

 俺は頭を抱えた。

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