第8話 リビングアーマー肩を震わす

 どっちがオークだかわからない戦い方で、死霊騎士リビングアーマーの一方的な蹂躙は終わった。


 こちらに向き直ると再び死霊騎士リビングアーマーは地に伏せて何か謝っている。


「すまない、また驚かせてしまっただろう? 俺もいきなりこうなって困ってるんだ……つってもわかんねぇか。あ――あぁ・ゆぅ・おーらぃ?」

 正座をしながら変なゼスチャーをしている。


 奇妙な話だが、恐怖より興味が勝ってしまった。変な話だけど、私は彼に希望を見出している。


「あ、アンタ……しゃべれるのかい?」

 

 ひょっとしたら、このまま味方になってもらえないか、と。

 できるかどうかわからないが、ダンジョンここを出るには彼を味方につけるしかない。


「うおっ、日本語わかるのか? 助かるわぁ」

 無邪気に喜ぶ死霊騎士リビングアーマー


「ところで聞きたいんだが、ここはどこだ? なんか洞窟っぽいんだが?」

 と意外なことを聞いてくる。


 ひょっとして……?


 以前、先輩冒険者に

『死霊系は生前の記憶を残している者がいる』

 と聞いたことがある。

 ひょっとして、まだ自分を人間だと思ってるんじゃないだろうか? 話次第では味方になってくれるんじゃないだろうか?

 

 うっすらとした希望にすがりたくなるけど、どこで魔物に目覚めるかわからないから、立ち上がろうとした彼を手で制した。


「来ないで、そのまま座って……お願いだから。ちゃんと教えてあげるから、そのまま座ってて」


 すると意外にも素直に正座し直す。


「俺は坪井 将監つぼい まさあき。ジャンク株式会社に勤めるサラリーマンだ。地震に見舞われて、気がついたらここにいた」


「アンタもついてない口なんだね。ツ……ツヴァイ、マサーキ?」


 名前で呼ぶのは親近感を作り出す第一歩だ。だが、なぜか名前のところだけ聞き取りづらい。

 何か変換されたような音に聞こえる。


「ツボイ・マサアキ」

「ツゥボイ・マサーキィ?」

 

「あーーめんどくさいから、ショーカンで良いや。ショーカンって呼んでくれ、みんなそう呼んでたしな」


 ヌハハッと変な笑い方をする。


「さて、アンタはなんて名前だ? なんでこんなところにいる?」


「そ、それは……」


 どこまで話して良いのだろう。

 

 いろいろ考えた結果、正直に自分のこととこれまでの事を話すことにした。


「私はレオ、十五歳。運び屋ポーターをやってたんだけど、められてパーティから置き去りにされた。私の親は三年前に亡くなって――」


 話し終えると死霊騎士リビングアーマーは、ぼそっと呟く。


「ヒデェ話だ……なんて言っていいか――」

 

 そしてグゥッと肩を振るわせた。

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