第7話 リビングアーマーは蹂躙する

「きゃん・ゆぅ・すぴーく・じゃぱにーず?」

 リビングアーマーは意味のわからない言葉を発した。


「あんだって?」


――――レオの目線です。


 恐怖で口の中がカラカラに乾いて思わず

「あんだって?」

 と聞いてしまった。


 普段なら赤面ものだけど、相手は脅威度10のリビングアーマーだ。まともな対応ができるはずがない。


「ち、違うのか? ロシア系か? スパシーバ……違うよな。アンダーテ……ぬ? ドイツ系?」

 と下を向いて何か呟いている。


 そんな死霊騎士リビングアーマーの後ろから、またもグルグル……と鳴き声が聞こえて来た。


 しかも今回は複数だ。

 暗闇に慣れてきた私の目に、黒い影が5、6体映る。


「ひぃっ!」

 

 目の前には死霊騎士リビングアーマー

 その背後から脅威度7のオークが5、6体。これはさっきと同じで、この死霊騎士リビングアーマーおとりになってもらうしかない。


「うしろ、うしろっ、うしろっ」


 小声で何度も注意を呼びかけて、背後から迫るオークに誘導しようとする。

 ところが、この脅威度10のバケモノは気づいていない。


「うしろ、うしろっ、うしろっ」


 二度目の呼びかけでやっと気づいたようだ。


「ぬ? また豚か。この世界では豚が立って人を襲うのか?」


 おもむろに足元の石を取り上げると2、3回重さを確かめるように、放っては掴みを繰り返しいきなり投げつけた。

 

「プギャ」


 腹に命中してくの字に曲がる。


「ふぬっ」


 足元の石を拾っては投げつけ、投げつけては拾う。


「プギャっ」

「プギィ――ッ」


 拳大の石を喰らったオークは、体を丸めて突っ込んできた。オークの皮は矢も通さぬ硬さだったはず。そんな石くらいじゃ……!?


「こぉれをくらいやがれっ」


 小脇に抱えるくらいの岩を持ち上げると、大きく体を反らして投げつけた。


「とりゃっ!」


 ゴブリンの頭と変わらない岩が、目にも止まらぬ速度でオークへ飛んでいく。


「プギャッ!」


 ゴキリッと骨が砕ける音がして、オークが倒れ込んだ。

 プシュ――ッ、と魔素を吐き出しながら頭が消え肉塊と変わるオーク。


「皆殺しだぁ、豚野郎どもっ」


 と手頃な岩を抱えて走り出した。

 岩を投げつけては頭を吹き飛ばし、後ろから襲いかかる手にしたオークにも岩を叩きつける。


 その度にプシュ、と音が上がりオークが肉塊に変わるとあたりは静かになった。


 まるで原始人の殺戮だ。

どっちがオークだかわからない戦い方で、死霊騎士リビングアーマーの一方的な蹂躙は終わった。

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