第6話 リビングアーマーの事情

 脅威度7のオークを一撃で倒したあと、ガチャリとリビングアーマーがこちらを向く。

 そしてなぜか深々と頭を下げた。

 なんで……?


――――ショーカン目線です。


 やっば……。

 しばらく何が起こっているのかわからなかった。


 気がつけば豚野郎を殴り倒し、涙目の少女がワナワナと口を戦慄わななかせている。

 きっとこれは目の前の暴力に怯えさせたに違いない。


 俺のトラウマが走馬灯のように駆け巡る。

 

 大学生の時、俺は空手部で。

 新人いびりの伝統なのか、よく合コン(学生同士の飲み会に過ぎないのだが)のセッティングを強要された。


 もちろん、当時の空手部なんか悪役以外の何者でもないわけで。

 セッティングなんてできるわけがない。


 それでも優しそうな女子を見つけては、土下座してなんとかセッティングに成功した。

 

 そして当日。

 なぜかOBまでやって来たのだが、これが輪をかけて悪魔。

 側から見れば、ヤクザに拉致される少年少女なわけで。

 ちょうどいっしょに拉致された女子があんな目をしてた。

 翌日からハブられたのは当然の事だろう。

 いまだに独身彼女なしなのは、この黒歴史による。(と思わないと泣いてしまう)


「すまなかったぁぁぁ――っ」


 親子ほどの歳の差がある小娘に深々と最敬礼する。


「へ?」


 あれだけ怯えまくっていた女の子が、怯え以外の反応を見せた。何を言っているんだろう? って感じだ。

 前髪に隠れた綺麗なサファイア色の瞳を見開いている。


 鉄鎧フルプレートを着たオヤジから頭を下げられても、別の怯えしかあるまい。


「通報だけは勘弁してくれぃ」

 

 ゴツゴツとした洞窟の地面に土下座して、ひたすら小さくなってみせる。


 そこに男のプライドはないのか?

 そこまでやる必要があるのか? むしろはたから見れば、悪事を働いてワビを入れているようにしか見えないのではないか?

 

 そんな葛藤と『そもそも言葉は通じているのか?』という疑問に固まる。

 少女は栗毛の髪でサファイア色の瞳をしている。

 これは外人女子が探検? して道に迷ったのか?


「きゃん・ゆぅ・すぴーく・じゃぱにーず?」

 とりあえず知ってる英語を話してみました。


「あんだって?」

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