第3話 なんですか? これ?

死霊騎士リビングアーマー……?」


 それは全身鎧フルプレートの悪霊騎士、脅威度10の最悪のモンスター。

 

「神様ぁ……」


 と神に祈る以外、私に何ができると言うのだろう。


――――ここにも危機を迎えた男がいた。


 それも全く世界を隔てた日本で。

 震度六の超局部地震が起こり、そして唐突におさまった。


「やっべ、やばかったなおい。……つっても俺しかいねぇし(笑)」


 ここは本社から転勤を命じられた坪井 将監つぼい まさあきの働くオフィス。

 と言っても所員は彼一人。

 三十五歳にもなって、オーナー社長のバカ息子と大喧嘩した挙句、早い話が左遷飛ばされた常識知らず大バカもの

 学生のころから問題児で、何かと職員室に呼び出されていたから、ついたあだ名がショーカン。

 名前を音読するとショーカンなのと、職員室に召喚しょうかんされてるってダジャレだよ。

 

 

 百八十センチ、八十五キロ。学生時代から空手で鍛えた肉体派。

 曲がったことが大嫌いで、社長の息子バカ息子のクソ幼稚なパワハラに楯突いたのがことの発端だった。

 急遽きゅうきょ転勤が決まり、オフィスも名刺も社宅まで準備されていたから、報復人事ってことだろう。


「どうすんべ……」

 

 十二畳のオフィスに、取り出したばかりの資料が散らばり、パソコンのモニターが倒れている。

 

 とりあえず本社に報告を、と電話をしても不通、業務アプリを立ち上げても圏外になっている。


「こりゃアレだね、災害通信障害ってやつだね。焦るな俺、焦っても良いことないぞぉ。ハイ、俺氏、まずは情報収集だ」

 

 と一人芝居めんどくさいクセを終わらせて、窓から外を伺うと霧が立ち込めたように真っ白だ。


「冗談だろ――火事だったらシャレにならんぞ。非常口はたしか――」


 と焦り気味に外へ続く内廊下へドアを開けた時、目の前が真っ白になる。


「うわっ」


 ただただ、辺りがまばゆい。

 と、同時に膨大なメッセージが頭の中に飛び込んでくる。


『圧縮ファイル――解凍』


 イメージはまさにそれだ。

 圧縮された情報が少しずつほぐれていくと、何やら単語が頭の中に浮かんできた。


「ジャンクション……? 立体交差……特異点? 女の子……守れ? チート……鎧騎士??」


 なんのこっちゃ?


 と頭を抱えたくなるのだが、肝心の腕も頭もない。

 バチバチ――ッと高圧の放電音が収まると、目の前には涙目の女の子が座り込んでいて、その背景に洞窟が広がっていた。


 なんですか? これ?

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