2.初めてのオーディション
中学のとき、どうしても演技を習ってみたくて、新聞に載っていた劇団ほにゃらら系のオーディションを受けに行った。記憶が曖昧なので明言は控えるが、大きな新聞に大きく広告が載るような大手だったことを朧気に覚えている。
挑戦者は三十人ほど、その内の二人か三人の合格者になった。
子どもだったので無邪気に喜んでいたが、北海道の片田舎の研修生に仕事の話はほとんどなく、ただ毎週「演技を習う」状態だった。
それでも、得たものは大きい。
まずオーディションでは、自己PRに力を入れた。特技や今後やっていきたいことを盛り込む。
本名に特徴があるので、迷わずその由来も説明し、まず名前を覚えて貰う。
オーディションでは、利用できるものはなんでも利用した方がいい。躊躇いは要らない。
出来ればひと笑いあれば、なおいい。
審査員の記憶に残ること、それが勝負だと思っている。
大人でも同様だと思うが、特に子どもは『明るくハキハキ』自己PR出来た方がいい。
『明るくハキハキ』、当たり前のようだが実現出来るひとは意外と少ない。
子どもの演技審査など五十歩百歩である。如何にハキハキ応答出来るかが勝負だと思った方がいい。
合格後の講義では腹式呼吸や外郎売り、具体的な演技指導を頂いたが、今でも記憶に新しいのは大通りを挟んで両側に立ち、反対側に居る講師に届くよう大声で叫ぶ訓練だ。
声の通りの訓練にもなるが、一般の方も行き交う屋外で「人目を気にしない」「恥ずかしいと思わない」訓練にもなったと思っている。
のちに劇団に入った際、奇声を発しひとりでブツブツ言うような配役を先輩が電車の中で黙々と演じていて、他の先輩方も気にせず放置していて、主宰の言った「一日その配役で過ごしてみればいい」というのはこのことかと感動したのを覚えている。
種明かしはされず、先輩は奇人のまま電車を降りて帰って行った。
それから一応宣材写真をプロのカメラマンに撮って貰ったのだが、人間には『利き顔』があるのを意識した方がいい。
左右対称な顔を持つひとはまれで、必ず右か左、どちらか『盛れて』撮れる角度がある。
反対から撮られそうになったら、迷わず利き顔を主張出来る気合いも必要である。
ナルシストと罵られようが、あくまで『第三者目線』で鏡とにらめっこするのは、初期の演技訓練では大切だと思う。
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