第5話

 「雷だわ!神がお怒りになっている…。今日なのね。今日?今日が誕生日…まさか、私が…"神"…?うそ…。嫌だ。やっと外に行けるのに。」

突然泣き出す彼女に不安を覚えた彼は問います。

「神って?早く行かないとこの雨じゃ川が氾濫して橋が流されちゃう。そしたらしばらく身動き取れなくなっちゃうよ。」

「…ううん。なんでもない。やっぱりまだ行けない。私、この土地でやり残したことがあって。」

「そんな!」

「大丈夫。やり終えたら急いで追いかけるから、先に行っててくれる?」

「なんだ。そういうことなら分かった。どうせ僕足ないし、そう早くは行けないから君も気をつけておいでね。あとこれ。一応僕の故郷までの地図書いておいたから。」

彼は手書きの地図を彼女に渡し、豪雨の中へと消えていきました。

彼女はそんな背中を見つめ、「さようなら。」と彼との未来に、そして自分の夢に別れを告げました。

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