第2話
おばあちゃんがいなくなった次の日、りたは家を出て長老のもとを訪ねました。
長老は彼女の父方の曽祖父でした。
「私、成人になりました。もう子供じゃありません。一人の大人です。"たた"を変えて下さい。」
"たた"とはその地域で神聖なもの、決して穢してはならないものとされていた、"家族の和"のことでした。
家族の和を変える、つまり家族の籍を抜け出し、村を去るという事です。
唯一家族の温かみをくれていた祖母がいなくなり、りたは家族という存在の必要性を感じる事ができなかったのです。
大人になるにつれ、普通だと思っていた自分の家族の在り方が周りと違う事に気づきました。
そして、幼い頃から家族の和など実感した事のないりたには、"たた"の重要性がよく分かりませんでした。
彼女は曽祖父に「"たた"を変えて下さい。」と伝えました。
それは、その村にとっては禁忌とされている行為でした。
「よかろう。」
長老はあっさりとそう言い、りたの胸に刀を突き刺しました。
生温かい液体が彼女の足を伝って地面を流れ、川を泳いでいきます。
「ごめんねおばあちゃん。生きる術、無駄にしちゃった。外の世界に行ってみたかったな。でもこれでまたおばあちゃんに会えるのかな。嬉しいな…。」
りたはそう言って目を閉じました。
誰にも看取られない最後でした。
禁忌を犯した者をその手で殺す、それが彼女の親族としての、はたまた長老としての彼なりのけじめでした。
彼女が死んでからも彼女の死を悼む者は誰一人としていませんでした。
禁忌を犯したのならしょうがない。
まるで初めからそんな人間なんて居なかったかのように、りたの家族すらも当たり前の毎日を消費していきました。
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