第4話 出し物

 結論から言うと、家に帰ったとたん、母親に出迎えられた。

「ママ友会、中止になっちゃってねー! こちらの男の子は?」

「はじめまして、立花悠くんと同じクラスの横峯晶といいます」

「めっちゃ可愛い子! 食べちゃいたーい」

 そうるんるんしながら母親にお菓子などを用意されて、つつがなくその日は横峯と部屋で宿題をし、つつがなく家まで送った。不服である。仕方ないけど。


 クラスでの出し物はメイドカフェになった。しかも、女装メイドカフェである。

「うちのクラスの美形にはメイドコスしてもらうから!」

 なぜか学級委員長の葉加瀬が大張り切りしている。

「まぁ横峯くんは絶対似合うよね〜」

 黒板に横峯の名前が書かれた。

「え〜」

 口の割には嫌そうじゃない横峯の声。

「横ちゃん、まんざらでもないでしょ」

「バレたか」

「んで、さっき他薦された木山くんでしょ、平岡くんでしょ……立花くんはまぁギリイケメン枠でいけるかな? どう思う、みんな」

 やめてくれ。俺の内心の悲痛な声は、「まぁいいんじゃない?」という声によって押しつぶされてしまった。

「いや、俺はギャルソンでいいから」

「立花くんは女顔じゃないけど、見栄えよこういうのは」

 あとはネタ枠ね、と、筋肉質の男もメイド役に指名されていく。はぁ……気が重い。目立つことは好きではない。横峯が親指を立ててこちらを振り返る。俺はげんなりした顔を向けた。


「元気出せって〜、立花、似合うと思うよ?」

「なんだよ、ギリイケメン枠って」

「いいじゃんイケメンって言われたんだから」

「なんにもしてないのにめっちゃ損した気分」

「わらた」

 そう話しながら移動教室のために廊下を歩いていると、香宮が横を俺達を追い抜きざま、言った。

「二人のメイク、あたしがするからね」

 そうだった! 香宮がメイク担当に選ばれてたんだ。

「ぐぎゅう」

「香宮さんになら任せられるな〜」

「それって告白?」

「違いまーす」

「ざんねーん。絶対に美少女にしてみせる!」

 そう笑って、香宮は通り過ぎていった。

「香宮、なんか大人になってない?」

 そう横峯が俺に言ってきた。

「みたいだな」

 さすがに諦めがつきかけているのだろう。

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