二十五話 デート?
アレフは内心とても動揺していた。
いや、待て待て。確かにヘスティアに買い物を頼んだのは自分だ。ただ、ルディアに頼むのと一緒の感覚だった。白髪の自分の代わりに買い物をしてきてくれ、とただそれだけのはずだったのに……
そう思いながら雑貨屋の外でただただ立ち尽くしているアレフの視線の先には、楽しそうに買い物をしているヘスティアの姿があった。
七階層にあった村に持っていく生活用品の購入をヘスティアにお願いしたのはついさっきの話である。
単純にアレフにとってはルディアに頼むのと同じ感覚で、しかもルディアよりもヘスティアの方が家事が長けている為、頼むには適任だろうと考えた結果だった。
その結果がこれだ。頼んだ直後、飛び上がって喜んだヘスティアに連れられて気がついたら雑貨屋まで連れてこられたのだった。
さすがに前回のことを覚えているのか、店の前で手を離してくれたが、ヘスティアが嬉しそうに調理器具をこちらに見せている姿がアレフにはとても眩しく見えた。
「こ、これじゃまるでデートじゃないか……」
だんだんと自分の置かれた状況に恥ずかしさを覚えたアレフはフードを目深に被ることで耐え忍んだ。
「はい、お待たせしました!」
「おふ! あ、ああありがとう!」
耐え忍んでいた所に突然現れたヘスティアの姿に、驚いたアレフは変な声をあげてしまった。
「どうしました?」
じっとアレフの顔を覗き込むヘスティアの顔が近すぎて、変に意識をしてしまったアレフは慌てて顔を背けた。
「い、いや、なんでもない! ホント大丈夫だから! あ、ありがとね!」
そう言ってヘスティアが持っている袋を受け取ったアレフは、収納用魔法陣を展開して中に袋をしまった。
「あ、それって収納用のネックレスですか? いつの間に買ったんですか?」
ネックレスの存在に気付いたヘスティアがアレフに問いかける。
「いや、買ってはいないんだ。ミノタウロスってボスを倒したら手に入ったんだよ。さ、家まで送ってくよ」
そう話してからアレフは歩き出すと、ヘスティアもアレフの横に並んで歩き出した。
「へぇ、ボスを倒したら手に入るんですか……いいなぁ……」
「ヘスティアも欲しいの? まあ、買い物とか便利になるかもしれないけど、高いお金払って買うほどのものじゃないよ?」
しかし、ヘスティアは首をブンブンと横に振った。
「違うんです! ネックレスじゃなくて私もアレフさんみたいに強かったらいいなって。そう思ったんです……
ルディアみたいに魔法も使い魔も使えたら、一緒に遺跡ダンジョンに潜ってアレフさんのお手伝いももっと出来るのに。私に出来るのはこんな事だけ……お役に立てないな。って……」
だんだんとヘスティアの足取りが重くなり、アレフから少しずつ遅れだした。そんなヘスティアの様子に気付いたアレフはヘスティアの前に立ち、肩をがしっと掴んだ。
「こんな事ってなんだよ? 俺はこんな頭だから買い物もろくに出来ない。魔法だって全く使えない。魔法じゃヘスティアに勝てないよ? 俺にはヘスティアが役にたたないなんて思ってない! それどころか必要な存在なんだよ!」
慰めようと語った自分の言葉を恥ずかしく思ったアレフは肩を手放して後ろを向いてしまう。そんなアレフの服をクイクイっとヘスティアが引っ張った。
「あ、ありがとうございます……もう大丈夫です。また、何かあったら絶対に頼んで下さいね。そ、その言葉が嘘じゃないって私に教えて下さい……」
アレフはコクッコクッと固く二度頷いてから、ギクシャクとした動きでヘスティアの家へと向かったのだった。
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