第11話:大トリ兄さん

 溜息をついてから、もう一度ステータス画面に視線を戻す。スキル名だけ色が違うのが気になってたんだよな。多分タップすると詳細が見れるんだろう。というワケで早速やってみる。




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 <ダンジョン農園LV1>


 亜空間に存在する農園を特定の場所に呼び出すスキル。農園では様々な素材を土に植え、独自の作物を育てることが出来る。



 <鑑定LV1>


 アイテムやモンスターの性質などを鑑定できるスキル。人間のステータスは表示できない。また高レベルのモンスターなど、鑑定レジスト能力を保持する相手のステータスも表示不可や一部を隠されたりといった現象が起こる。

 成長限界はレベル5。


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 ふうむ。今度はふざけたり煽ったりはなかったな。一応、さっき謝ったのが効いたのか。はたまた忘れた頃に天丼かます気か。たぶん……後者だな。


「ちなみに、菜那ちゃんは俺のステータスって見れる?」


「いえ。何もない空間しか」


「そっか。俺の方も、そっちのステータス画面は認識できないな」


 どうも、そういう物らしい。ということで、


「で、菜那ちゃんの方のスキルは、どんな感じ?」


 口頭で教えてもらうことにする。


「概ね、先に推測した通りでした。幸運の上昇と、そのシェア。ただ幸運の増幅にも上限があるらしく、流石にレベル差が100あるような相手と戦って勝てるとかはないみたいですね」


 苦笑しながら話してくれた内容は、まあ納得のいくものだ。その他にも致命傷を治すとかも無理なんだろうな。ただ先のように致命傷になりうる怪我を回避することは出来るのだから、それだけでも十分すごいけど。


「スキルは2つだけ? レベルアップで増えなかった?」


「はい。ただどちらもスキルレベル2になりました」


 ああ、レベルアップで必ずしも新スキルゲットではないのか。そして俺のダンジョン農園がレベル上がってないところを見ると、スキルレベルと本人のレベルも完全に連動してるワケではないようだ。


「成長限界みたいなのは書いてる?」


「エンゲージの方は書いてないですね。エンジェルラックの方はLV10とあります」


「なるほど。俺のダンジョン農園も書いてないから……成長限界がないか」


「秘匿されているか、でしょうか」


 本人に秘匿する意味あんの? とも思うが、あまりナビも信用ならんからな。何らかの意図で隠してますと言われても余裕で納得できる。


「まあここら辺は、やっぱり帰ってからだね」


 というか、もう二度とダンジョンには入らない可能性の方が高いのだから、調べる必要もないのかもだけど。まあでも、これも何かの縁、気になる事柄は後学のために調べるかな。


 という感じで話はまとまり、再出発。

 そこから5分くらい歩いただろうか。ちなみに勝手口から真っ直ぐ奥(?)へ進んでみている状態。


「うお!?」


 突然。数メートル先に、いかにも何かありそうな金色の扉が現れた。本当にいきなり何もない所にパッと出てきたから、思わず仰け反ってしまった。すごいなダンジョン。不思議技術のオンパレードだ。


「扉、ですか」


「またナビが出るかな?」


「今度は怒らせちゃダメですよ?」


「うん」


 2人、少し気が急いていた。もしかすると、これが地上への扉かも知れない、と。

 自然と駆け足ぎみになる。あまりに無警戒だった。


 急に視界が暗くなる。日が翳ったか、と上を確認して……


「うわあ!?」


「な!?」


 空から何か降ってくる。俺は咄嗟に後ろから来る妹を突き飛ばす。そして俺も真横に回避。だが間に合わず、右手を下敷きにされた。と思ったら、ヘドロに手を突っ込んだような感触。


「な!?」


 振り返り見ると、スライムの体の中に手が入り込んでいる状態だった。


「兄さん!!」


 菜那ちゃんが即座に駆けてきてゴルフクラブを振り下ろした。スライムの体の中にヘッドが一瞬沈み、しかしゴンと鈍い音を立て、弾かれる。そこでこっち側のジェルの密度が下がったような感覚があり、すぐさま腕を引っこ抜いた。


「下がりましょう!!」


 否はなく、即座にバックステップで距離を取る。改めて敵の姿を確認すると、普通の青色スライムと体色が違う。エメラルドグリーンというのか、青より緑の方が近い色合いだ。


「別種か」


「に、兄さん!?」


 菜那ちゃんの慌てた声。今度は何だ。


「兄さん、服、服」


「え?」


 菜那ちゃんが指さしてるのは、俺の腕だった。スライムに取られて、その中に沈んだ左腕。


 まさか溶かされたのか!? 慌てて視線をやると……


 厚手のロングTシャツの袖の部分だけ、すだれのようにフリンジが垂れ下がり、金と銀の二色構成になっている。ここだけゴージャス!!


「小林○子さんみたいになってますよ!?」


「なんだこれ!!」


 混乱の極致だった。幸いにも新種スライムは通常個体と同じくらいの移動速度しかないらしく、ウネウネと微速前進中。なので体勢を整える余裕はあるけど、頭が事態に追い付けない。


「兄さん、鑑定です、鑑定!」


「あっ、そっか」


 まだまだ自分がスキルを使えるという自覚がない。


 スキル・鑑定! 


 脳内だけで唱えると、そのまま発動したらしい。ナビの確認が入るのは一番最初だけか。



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 名前:進化スライム

 

 レベル:5


 素材:進化スライムのコア




 備考:

 体内に取り込んだ物質を進化させる能力を持つ。生物は進化させることは出来ない。


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 なるほど。俺の袖も体内に取り込まれた時に、進化させられたワケか。いや、これ進化なのか。すげえ派手にはなったけど。



 











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