第5話異世界漫画について考える

 富来組への恐ろしい家庭訪問の次の日。いつも通りの日常が思考クラブに帰って来ていた。兎は事務所の収支書類を作っているため、丸と哲は雑談をしていた。

「久住は頭良いの?」

丸は少し黙った後言った。

「普通」

「普通ってどのくらい?」

「順位は真ん中くらい」

「ちょっと以外かも。久住って頭良さそうに見える」

丸は悔しそうな顔をした。

「そう言う佐倉はどうなんだ?」

「普通よりちょっと上」

「ま、まあ佐倉は理系だろ?私は文系だから比べるものでは無いな」

すると、兎が口を開いた。

「ねぇ。なんか2人とも話し方変えた?」

「ああ。佐倉に私への敬語をやめてもらったんだ。でも安心してくれ。兎には敬語を使わせるから」

「そんなに気を遣わないでよー。今は組長でも何でもないんだから。ね?だから、兎にも敬語要らないし先輩呼びじゃ無くても良いからさ」

「わ、わかった富来」

佐倉は気を遣って従わざるを得なかった。

「それで、兎は書類終わったのか?」

「ちゃちゃっとね。さっきの話聞いてたけど、兎は実は頭良いんだよー。なんてったって歩くGoogleって言われてるんだから」

「こっちも以外だ。イメージでは2人の学力が逆な感じするけど」

哲は今度兎に勉強を教えて貰う事にした。

「わ、私だって!文系教科なら上位だぞ」

丸は負けず嫌いだった。

 「もうそんなことどうでもいいからさ、早くテーマ決めようよ!」

「兎がまともな事を言っているだと!?まあそれもそうだな。では今日のテーマは佐倉が決めてくれ」

「ええと、じゃあ最近多い異世界漫画で」

「兎も何個か見たことあるけど、凄い沢山あるよね。全部は見きれないよ」

「物語の出だしが確立されているから描きやすいのだろうか」

「まぁ、だいたい転生か召喚だからね」

「逆に、まだ開拓されていない異世界ものなんてあるのか?」

「転生したらホモ・ネアンデルターレンシスだった件とか?」

「異世界じゃないじゃん。時間軸が違うだけじゃん」

「転生したら異世界ゴキブリだった件とか?」

「まず異世界ゴキブリってなに」

「転生したら志村けんとか?」

「音はしっくりくるな」

 「ちょっと変わるけど。もし自分が異世界に行ったらどうする?兎だったら最強の組を立ち上げるかな」

「私だったら別世界から来た神として宗教を立ち上げるな。」

「なんか、2人共夢があるようで無いなぁ」

「じゃあ佐倉はどうする」

「俺はやっぱ王道に魔王を倒す勇者になるかな」

「異世界に魔王がいるとは限らないよね?」

「じゃあ魔物を討伐する最強の冒険者に……」

「魔物がいるとも限らないな」

「じゃあ!現代の知識を使って商売で無双……」

「生き物がいるとも限らないよ」

「何なんですか!じゃあもうただ生きてるだけにします!」

「空気があるかも分からないよね」

「え?俺だけ異世界じゃなくて無に飛ばされてる?」

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考える人々 黒田 望 @sentehisshou

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