第4話事務所について考える
兎が本職の方だと知った日に、哲と丸は招待状を貰った。
「富来組はとても賑やかでアットホームな事務所です。是非明日遊びに来てください。放課後に兎が案内します。ps富来組のことは家族にも秘密にしてください」
2人はこれほど嫌な招待は受けたことがなかった。
次の日の放課後
哲と丸は兎に案内されながら事務所へと向かって歩いていた。
「久住さん。もし、もしもだけど。生命の危機を感じたらどうします?」
哲は兎に聞こえないくらいの声で聞いた。
「せーので逃げよう」
「でも、一緒の方向に逃げたら捕まっちゃいますよ」
「確かにな。じゃあ私がドア側に逃げるから、佐倉君は反対に逃げてくれ」
「いやいや!俺がドア側に逃げますよ。丸先輩は年上なんですから。年下に譲ってください」
「こんな時だけ年下を使いやがって」
コソコソ話していると兎が歩くのをやめた。
「ここだよ。ここが事務所だよ」
2人は辺りを見渡したが、それっぽいものはない。丸は不思議そうに質問した。
「どこにあるって言うんだ?周りにはコンビニとバーミヤンとメイド喫茶くらいしか無いぞ?」
兎は勝ち誇ったような顔でニヤニヤしている。
「実はこのメイド喫茶が富来組の事務所なのでーす!ささ、入って入って!」
3人が中に入ると、やっぱり普通の店のようだった。働いている人も普通。客も普通。
「店の奥にある階段を登ると到着だよ」
階段を上っていくと今度は確かに事務所のような場所だった。だが、畳の部屋は生活感に溢れていた。もう1つの部屋には机が4つ。パソコンやファイル棚なんかがある。
「事務所は事務所でもヤクザの事務所じゃなくて、お店の事務所じゃないですか」
哲が安心したように言うのを見て兎はまたニヤリと笑って言う。
「そういうカモフラージュをしたヤクザの事務所なんだよ。まあ、畳の部屋は兎が住んでるんだけどね」
「ヤクザっていうのは堂々と組をかまえているものじゃないのか?と言うかなんでカモフラージュする必要があるんだ?」
丸は考えるのを放棄してしまったかのようだ。兎は少しため息をついて悲しそうに言った。
「実は最近、暴対法が厳しくてさ。堂々と事務所なんてかまえたら大変なんだよ。だから何もかも隠すことにしたの。本家にも事務所がどこか教えて無い。なんなら組長の顔も知らない。笑えるよな?兎、これでも直系組長なんだけどね」
やばい情報がポンポン出てくる。そして哲は気づいてしまった。
「も、もしかして……俺らはとんでもない事をしってしまったってことじゃ……」
「ああ、そうだよ。だから選ばせてあげよう。デッド・オア・ダイ」
「それどっちも死じゃないか!」
丸が人生最後のツッコミを決めた。兎は大声で笑った。
「冗談だよ!兎は2人を信じてるからね。ただ2人が知った秘密がどれだけ大きなものかを実感して欲しかったんだ」
哲と丸は冗談が嫌いになった。
事務所から無事に帰路に着いた2人。
「いやー怖かったな!でも、せーので逃げるとこまで行かなくて良かった。なあ?佐倉くん」
「久住。お前ずっとドアの近くに陣取ってただろ」
「あれ?バレた?私だけは助かるかなーと思ってね。それより、喋り方、慣れてきたんじゃないか?今後ともよろしくな相棒」
「もしかして久住、昨日の相棒見て影響された?」
「相棒見ても、あんまり呼び方変えないだろ」
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