第3話ヤクザについて考える
思考クラブに向かう廊下で哲は丸と会い、2人で歩き始めた。
「そろそろクラブにも慣れてきたとは思うが、今後も続けて行けそうか?」
久住先輩の口からそんな言葉が出るとは思っていなかった哲は驚いた。
「そうですね。運動もしないし目標とかもないからこそ、軽い趣味みたいな感じで居心地が良いですね」
「そうか。よかった」
久住先輩は安心した様子を見せていた。
「佐倉くん。考えたんだが、思考クラブ内では先輩後輩の上下関係をなくして、友達ということにしないか?」
「なんでですか?」
「私たちの主な活動は思考だ。だが、意見を言うときに上下関係があると相手に躊躇いが生まれてしまう。これでは真に思考することはできない。そう考えたわけだ。」
哲は久住先輩の意見がもっともなように聞こえた。
「確かにそうかもしれません。」
「では、その敬語と先輩付けはやめてくれ」
「分かりました……いやわかった。ちょっといきなりはキツいかも知れません。徐々に慣らしていくよ。久住さん」
「さんも要らないけどな」
そんな話をしていた2人は思考クラブの部屋に到着した。すると、部屋の中から2人の喋り声が聞こえる。ドアを開けると、そこには兎と黒いジャケットを羽織ったサングラスでスキンヘッドの男がいた。
「あ」
兎の声が漏れた。
「兎、その男は?」
丸が質問をすると兎の目が泳いだ。
「お、男?そんな人いないよ?」
兎は口笛を吹き始めた。
「俺にも見えてますけど。巨漢の男が」
哲も問い詰める。
「わ、わかった。話すから。実は彼は兎のお父さんなの!」
一瞬、静寂が通り過ぎた。
「いや、兎のお父さんは授業参観に来ていた人だろう?あの人もかなりイカつかったが、別人じゃないか」
グラサンの男が口を開いた。
「組長!もう誤魔化すのは限界ですよ!」
「組長!?」
哲と丸は驚きのあまり言葉がハモった。
「本当に本当の事を言うと兎は富来組の組長なの」
「組長はお2人にこの事がバレたら距離を置かれると思っているんです。だからどうか、今まで通りにしてやってくれませんか」
哲は絶句していた。丸は少し震えた声で言った。
「も、もちろんさ。今までと何も変わらな……」
丸が言い終わる前に兎がグラサンの男に向かって言い始めた。
「おい。何てめぇが保護者面してんだ。あ゙?お前私にそんなことできた身分か?元はと言やお前が学校まで会いに来なけりゃ済んだ話だろうが!事務所でたっぷりしめてやるから先帰ってろ」
「組長。すんません。それだけは勘弁してくだせえ」
「分かったならとっとと帰れ」
「はい!失礼します!」
グラサンの男はそそくさと帰って行った。兎は急にいつもの笑顔に戻り明るい口調で喋る。
「ごめんねぇ。驚かせちゃって。でも、丸ちゃんがいつも通りに接してくれるって言ってくれて嬉しかったー。これからもよろしくね2人とも!」
久住の顔が青くなっていたのを哲は見ながら首を縦に振った。
「あ!もうバレちゃったし、今度兎の事務所遊びに来なよ!綺麗にしとくからさ」
「あ、アアモチロンヨロコンデ」
丸はカタコトで答えた。
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