一変 マナの急所 マナ孔
リードルの顔に傷がついたのをみた敵兵の一人が、暴走気味に前に出て、叫んだ。
「よくもーーー!!!」
「待て!!!」
叫んだ将官の言葉も聞かずに、兵士が前に踊りでた。
オーヴァールは、一瞬でそれを切り伏せると、続いてでてきた二人も目にも見えない剣技で切り伏せた。
《ギャキンッ》
音もなく倒れる三人。
「ほう……」
敵将は、オーヴァールの太刀筋をよくみた。それは確かに“マナの急所”を狙っている。マナ孔と呼ばれるもので、人によってサイズや場所は少しずつずれているとされるが、その急所に何かしらの魔法、魔力を流し込み、一瞬で封殺しているようだった。
《ツカ、ツカ》
そして、リードルは部下の首元に手を当てる。脈があり、呼吸もしている。気を失っているだけだ。次にリードルは、オーヴァールの足元に転がる超小型の投げナイフに目を向けた。
「ただ者ではないな……お前、名は?我名はリードル」
「名か……今は“オーヴァール”と名乗っている」
「知らんな……」
「なぜ、名乗る、名乗る間もなく、攻撃をしかけたものが」
「お前が……麻痺毒を塗ったナイフをかわしたから……死者に対する餞別だ」
「私は、この子さえ引き取れれば……」
《シュンッ》
リードルはこれまでよりずいぶん大きなナイフをなげた。ほとんど小刀といっていいほどのナイフを綺麗に。オーヴァールは関心したが、そのナイフが風を纏っていることに、直ぐ傍に来るまで気づかなかった。
《ガキィイン!!!》
風をまとったナイフは、オーヴァールのサーベルにとめられた。だがそれはオーヴァールが“半透明の黄色い球体”をサーベルにまとわせた瞬間に、動きをとめ、転がった。
《キャキィン!!!》
すぐにリードルはオーヴァールの懐にはいった。西洋的意匠の入ったカタナのような剣をもちだし、彼に切りつけた。
お互いに切ってはいなし、衝撃をころし、お互いひいては押しの攻防をすると、リードルはいった。
「お前、その子供を救うといったな……その子供が、生きたいと望んでいるとは、私には思えんが……」
「……」
ふと、リードルは子供に目を向ける、沈んだ目、固く閉じた唇、脱力した筋肉。確かに、生気はなかった。
「お前には、その子は救えん、お前自身を救えないお前には……」
「お前が何をしっている」
《ギャキィンッ》
リードルはひときわ強く切りつけたあと、オーヴァールは後方におしやられた、そして言い放つ。
「お前の中にある情熱、怒り、そうだな“復讐心”隠し通せると思ったか?」
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