本性 リードル

《ドンッ》

 少年の背中を突き飛ばすと、セッヅは叫んだ。

「セッヅはここにいる!!!こいつが主犯格だ!!」

「!!」

 門の向こうでは、竜門騎士の後方に将官らしき人影がみえた。

「リードル将官、いかがなさいますか」

 そう呼ばれた男は、髪をかきあげた。赤い長い髪はウェーブかかっていて、染めたのか、白髪まじりの前髪がひとふさ、それをかきあげると、彼は通る大声で言い放った。

「いいだろう!!そこの者!!贄を差し出せ!!レジスタンスの首領を!!」

 セッヅは少年の首根っこを掴んだ。そして背中に小刀を押し当てる。

「いいか?何でもするといっただろ?俺たちの役に立つと……必ず助けにいく……だからひとまずお前は捉えられろ」

「!!」

 徐々に、ジリジリと門の入り口に近づいていく。手下はおびえている。

《ガッ》

 少年の足をけり上げてセッヅはいった。

「背を伸ばせ、足をつま先立ちにしろ、できるだけ背が高くみせるんだ」

「……!!」

 少年は何もいわず、そのまま前にでた。そして、ある程度の距離までくると

「もういいだろう!!」

 とセッヅが叫び、将官はコクリと頷く、少年は蹴り飛ばされた。まだ幾分距離はあるが、将官は少年を見下ろし、尋ねた。

「お前がセッヅか?」

「そうだ」

 少年はなるだけ声色を低く変えて答えた。だが、違和感はなくもなかった。そこで兵士の一人が将官に語り掛けようとした瞬間だった。

「よし、弓兵、後方の二人を先に撃て」

 将官は、そう命じると、弓兵が即座に弓をひいた。

《ピュン!!》

 瞬く間に放たれた矢は、セッヅと手下めがけて落下していったのだった。


《ズン!!!》

 次の瞬間だった。将官リードルは、目を見開いて素直におどろいた。その鋭くキレのある目を存分に。

 少年を抱えたオーヴァールが、目の前に現れたのだ。早すぎて、何が起こったかわからなかった。それと同時に、兵士たちがざわついた。

「あれは……」

 セッヅと部下は、黄色いドーム状のものに覆われていた。それは半透明で半球状のもので、地面から生えるようにして存在していた。その端には、ドームに矢がつきささり、攻撃をくいとめていた。


「新手か……」

 そうつぶやいた瞬間、リードルは自分の頬に血がついているのにきがついた。というよりもそれは、切り傷だった。みるとオーヴァールは確かに片手にサーベルを手にしていた。



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