無造作。

 ズシリ、ズシリ、青龍騎士はジリジリと歩みよってくる。背中の反った剣を片腕の中で回す。

「な、なああんた、俺たちを助け……」

 そう言い終わらないうちに、オーヴァールはセッヅ達の脇を通りすぎていく。

「アニキィ……」

「今のうちに逃げるぞ!!」

 二人は走りだした。


「いいだろう、私はただ……“探し物”をしたいだけだから、この街が騒がしいいと困る」

 青龍騎士は、身構えた。オーヴァールは、走り始めたかと思うと、とたんにわきの壁を上り始めた。そしてその足は、何らかの魔力によって青くひかり、またその足が地面につくたびに、石造りであれ、木製であれ、民家の壁を破壊していくのだった。その勢いは近づくにつれ強力になり、青龍騎士は、一歩、二歩とひるんで尻込みした。

「フッ……若い」

 そうささやいたオーヴァールは、地面に近づきより魔力を増していくと、地面をがれきにして吹き飛ばしながら駆け抜け、兵の前に右手をさしだした。その右手は青く光っていて、兵の額にのばされた。

「クッ……」

 いつとりだしたのだろう。オーヴァールはサーベルをてにしており、青龍騎士が腕を切ろうとしたのを剣さばきではじいた。

「ヒイィッ」

《ピトッ》

「!!」

 オーヴァールはその瞬間、右手を伸ばすし青年に触れる瞬間に、魔力を消失させた。

《ストン……》

 青龍騎士は、その場にへたり込んだのだった。


 その後、別の青龍騎士がかけつけたが、彼はへたり込んだままだった。

「おい……何があった」

 先輩騎士が尋ねると、彼は尻をつきへたり込んで地面に両手をつき

「彼には……何もなかった、殺意も、希望も、何もなかった……奴の目はまるで……魔王だ」

 といった。


 その頃、街の端……出口に走っているセッヅ。手下は、わめきたてる。

「くそお!!皆もう逃げたのか!!」

「構わん!!命は大事にしろといってあるだろう!!」

「しかしアニキィ!」

「おいまて……」


 その時、出口付近をうろうろしている貧相な格好の少年がいた。オーヴァールがあの時すれ違った少年だった。

「アニキィ、あいつは……」

「まて、まだだ」

 その時、街をおおう四角形の壁の入り口、門の両端から、“龍騎士兵”がぞろぞろと群れをなし、姿をあらわした。

「アニキ……まずいんじゃ……」

「くっそ、しょうがねえ……」

 セッヅは突然走り出したかと思うと、首のスカーフマスクで顔をおおった。そして、少年に近づき、右手をかざすと、驚くことにその顔はセッヅとうり二つのものになった。

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