咄嗟
セッヅは突然頭をさげた。
「申し訳ない、数々の無礼を許してほしい」
「フム?」
「折り入ってあんたに頼みたいことがあるんだ……」
「何だ?」
「新人の育成だよ……別にあんたに復讐に加担しろとはいわない、ただ……俺たちみたいな奴らにしか救えないやつらもいる……奴隷さ」
「奴隷……」
オーヴァールはその文化についてはそれほど詳しいわけではなかった。彼は遠い所から来たためだ、だがなぜか、ふとあの“少年”の顔が浮かんだ。そして答えた。
「その奴隷は……お前たちのような若者か?」
「……」
目を丸くして、手下とセッヅは向いあった。そして、プススと笑いあうと、答えた。
「ああ、間違いねえ……奴隷やら孤児やらさ……俺は、復讐は大義名分、国が豊かになりゃどこでもいいっておもっている、それは本心さ」
オーヴァールは、したたかな瞳でセッヅをみた。どこか所在投げで、しかし真相を隠したままで、目的などないような目をしている。オーヴァールは自分の目的を鑑み、省略した。
「ならばいいだろう、その代わり“情報”が欲しい」
「どんな情報だ?」
「ある女の……」
そう言いかけたとき、手下とセッヅの背後が爆発した。
「やべえ!!兄貴!!」
「おい!!いちいち怯えるな!!」
「そうじゃねえ!!よく見てくれ!!」
建物の壁を破壊して弾丸のようなものが転がったかと思いきや、それは埃がおさまってくると、それは、姿を現した。甲冑の頭部分に一本の光る青いツノを携えた。
ところどころ青い鱗や鰓が生えたようなデザインの甲冑、そして衝撃ももろともせず、彼は立ち上がった。
「人間大砲だ!!!白羽部隊の青竜騎士だよ!!」
その騎士は、背中から青い炎が燃える剣を取り出すと、手始めに一振り、空で二振り剣戟をふるって見せた。そして左手に、鰓が幾重もかさなったような丸型の盾をかまえると、こちらにむけて腰をおろし姿勢を整えた。
件の二人は、小声で会話する。
「アニキィ、どうすんだよ、挟まれちゃったじゃねえか……こんな得たいの知れない二人に挟まれて」
「いーや、俺の目に狂いはねえ、この男はただ者じゃねえ、こいつは……戦争が嫌いなのさ、そして“子供・女”が好きなんだ」
「へえ、この紳士がねえ、いやらしいやつだ、だがどうするんだよ、こんなやつ仲間にして」
「“新人育成”だよ、まだまだうまくいってねえだろ、こいつがどこで死んだってかまわねえ、最悪新人とともに捨てたり、今だってホラ“オトリ”に使えんだろ」
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