暴動 グラウン・ロベル セッヅ
ふと、オーヴァールは気づいた。彼の並外れた記憶力によって
(あの少年、何ものかに似ている、そうだ、隣の土地を収める領主の兄グラウン・ロベルにどことなくにていた、だがその一方で違和感もあった、どこか……“偽物じみて”いる、しかし、それだけだろうか、何物も寄せ付けぬ野心、あるいは……)
はっとして振り返る。しかし、少年の姿はそこにもうなかった。財布もなかった。
(ふう)
気のせいだろう、前を向き直る。群衆はほとんど逃げたようで、その正面には、端正な顔立ちをして、希望にあふれたような目をした、左目眼帯の前髪がやけに尖った男がたっていた。
「なんだ?お前は」
魔道具のような、魔法陣の描かれているロケットランチャーを片手で引きずりながら、左アゴの深い傷をさすりながら、細い目をより細めていた。
「我は、旅のも……」
そう言いかけた瞬間、すかさず男は、オーヴァールの胸元にもぐりこんだ、あまりにすばやい、しかしオーヴァールはその男の手を片手でいなした。
「ふん、やるな、覚えておけ、おれは……セッズ、”この世界への反逆者”だ」
「!!?」
セッヅは逆の手、左手で太ももにてをやると、短剣をとりだしオーヴァールの頬をきりつけた。それは彼のアゴの傷と同じ用な箇所だった。あまりに早い剣さばきで、オーヴァールは、男の手が刃物に変わったかと錯覚したのだった。
「俺は執念深い男だ……俺のアゴに傷をつけた男をさがしているんだが……しっているか?」
「知らんなあ」
「ならば死ね!!」
セッズがその剣先をオーヴァールのアゴに伸ばした瞬間だった。セッヅは自分の肘に電撃のようなものが走ったのを感じた。そんなはずはないとおもった。魔力の相殺-もしその可能性があるとすれば、”魔族”しかし、そんなはずはないのだ。魔族は10年前に封印され、隔離されているのだから
セッズは、咄嗟に短剣を手放し距離をとろうとした。が、すでにおそかった。オーヴァールはタックルの形で姿勢を低くして、右手に《赤黒い魔力》を蓄積していた。セッズは覚悟した。
「終わった」
これは世にいう”災魔球”だ。高等な魔族のみがその高みにたっするという、街ひとつを破壊するという”スキル”。セッズは己が吹き飛ばされたのを感じると、すべてを覚悟した。つまり、体のあちこちが吹き飛ばされ、チリと化し、墓にさえ遺体のすべてが収容されない可能性があることを。
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