<悲惨な現実>
学校に行って教室に入って、いつも通り授業を受ける…………………………そんなわけでもなく、1限目が始まると共に各クラスの黒板に張り紙がされていく。その瞬間に生徒は唾をのんで恐る恐る近づいていき、その結果を噛み締める。
目の前には5教科の結果と継続or退学のどちらかが記載されている。雨音理沙…………………………国語:80点、数学:86点、英語82点、社会科:82点、理科:61点(継続)。
「やっぱり、こんなものよね~~~それにしても、理科があれだけ取れたことに謎なんだけど………………?」
ふと気づいたが、妙に周りが静かである。生徒の顔を見ると、それがなぜかなのかすぐに分かった、絶句している。試験の一覧表を見てみると信じられないほどの数が"退学"の表示で埋まっていた。その1,2分後のクラスの悲鳴というのは尋常じゃなかった。
「うそでしょ!私が落ちるなんて信じられない!」
「そうだよ!絶対に何かの間違いだよ!」
「ああ~~~~うそだ~~~~これからどうすりゃいいんだよ~~~!」
焦り狂う様子を見て、今自分がここに残れていることを再び安堵することとなった。
それからしばらくして先生がやってきて全員を席に座らせる。先生がしゃべろうとする前に生徒が先に質問をし始めた。
「先生!救済措置みたいなものはないんですか⁉オレ、まだこの学校に残
りたいです、まだ何もできてないんです、お願いします!」
みんながその希望にかけているようにも見える。だが、そんな希望はすぐに打ち砕かれる。
「残念ながら、そう言ったことは許されていないよ、それがこの学校のルールさ、実力が最低限この学校には見合っていなかったという事、ただそれだけなんだよ………………山添くん」
「そんな!………………………………ゔうううう!」
山添も今回の退学者の1人、彼はその事実に膝から崩れ落ちていった。先生も悲しい表情をしているが、仕方ないと言った形で次に進めていく。
「今回の試験を得て、君たちはどう生きるのかしっかり考えていってほしいと思います。これから、20名の方たちには、退学の手続きを取ってもらいます!それではこちらに移動してください」
生徒が次々といなくなっていく教室を見て雨音は唖然としていた。こんなにも過疎化したクラスはどこか寂しいように感じられる。しばらくすると、先生が戻ってきて再び話し始める。
「この度、試験に合格した20名の皆さん、僕は誇りに思っています!この学校に残れたことに誇りをもって、次につなげていってください。また、この先、行事ごともたくさんありますので、楽しく学校生活を考えていきましょう!」
先生のその1礼と共に今日の授業は終わりとなった。
最終的な結果はAクラス0人、Bクラス1人、Cクラス2人、Dクラス8人でEクラスからは19人プラスの山添の20人の退学が決定し、幕を閉じることとなった。
午前中に学校が終わったことで暇時間ができ、校内を見て回ることにした矢先とんでない人と鉢合わせしてしまう。
「あら、こんにちわ!雨音さん!」
「…………………………あ、舟志先生、こんにち……は………………」
「元気がないですね、どうしたんですか?」
全くこの先生は自分にしたことを覚えていないのだろうか?実際に生徒を見捨て、あまつさえ退学させようとしたことを!
「見ましたよ、結果。驚くべきものでしたわね!」
「そうですね、それで先生は私に何の用ですか?」
「いいえ、何の用もありませんが、この学校に残ることにしたのですね!私としちゃ、少し不安対象と言いますか、何とも言い難い存在ですね!」
笑顔でそんなことを言ってくる舟志先生に不気味さを感じたが、今はそんなことどうだっていい。
「先生、ありがとうございます!」
「ありがとうございます?」
「私は一度、どん底に落とされてから、気が付いたんです、何がしたいか、私がこの学校に残る意味は何か?様々なものを見てようやく、自分のしたいが見つかりました。それは…………………………この学校でいずれ、上位を目指すことです!初めて、ガチで頑張るってことを学んだいい機会だったと思います、先生も私の成長のために今後も利用させてもらいますよ?」
「なるほど、そうきましたか~~~いいですよ、だ・け・どあなたがもし、もうこの学校にいていられないと思った時は私に言ってね。すぐに退学させてあげるから!」
「それじゃあ、先生婚期逃さないように頑張ってくださいね!それじゃあ!」
最後は皮肉をこめて言ったら、先生の顔が笑顔のまま少し引きつっていた。これから忙しくなりそうだけど、そんなことを考えずに校内探検をすることに専念した。途中、先生と来た保健室に差し掛かる。中には見たことのあるような生徒がいた、確かあの子は………。
「西紀さん?よく舟志先生としゃべっているの見かけたけど、どうしたの?」
「あ~~~この子、ちょっと精神状態が安定してないからワイワイ話しかけないでもらえると助かるっていうか~~~あ、リサちゃんじゃん!」
「ゲッ!チャラ男先生だ」
「その言い方止めて~~~普通に傷つくんだけど~~~」
奥から舞島先生が出てきて、反射的に嫌な顔をしてしまった。
「それよりも、どうしたんですか?この子」
「舟志先生とのトラブルでちょっとね、ここで授業とか受けてたから他の子はあまり知らないと思う」
そう言えば、舟志先生のクラスで1人、しばらく学校にこなかったと噂になったことがあったっけ?
「あなたもあいつに何か言われたの?」
「………………っていうことはあなたも私とおんなじことを?どうして、
そんな平気な顔でいられるの?もう、いろいろと疲れたよ」
この子はそのまま、沈んでいった誰の助けもなかった。それが今ここにある現実だとひどく実感した。
「私はね、ある人に助けてもらったっていうか、進む道を教えてくれたの、どうすればいいか改善案とか……………………取りあえず、いろいろ教えてもらった。だから、ついでにもっと高い所目指そうかなって!」
「私はテストも受けてないからもうこの学校にいられないんだ、この先どうすれば、いいのかな~~~?」
そんな事実に少し驚きつつも、1つ提案してみる。
「あのさ、私と連絡交換してくれない、もし何かあったら連絡してくれればいいから、些細な事でもいい、私友達が欲しいの!ただそれだけ」
「うん、もちろん!」
そう言いながら、彼女は泣きながらオーケーしてくれた。
「私、これからどうなるか分からないけど、できるだけ頑張ってみるね!もう一度、自分の人生やり直せるように………………」
私は深くうなずいで、彼女の退学を見送った、そして初めての友達に嬉しさがこぼれ出てきた。
「雨音ちゃんはこの後どうするの?何か用事でもないんなら……………………」
「結構です!じゃあね、先生!」
雨音はそのまま、今日1日は校内で自由に過ごすことにしたのであった。
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