<~試験開始~>
何事もなく学校に着くと席に座ってから先生が来るのを待つ。いつも通り、平気な顔をしている人もいれば、今になってとてつもなく焦っている人もいる。
しばらくしてから、先生が教室に入ってきた。テストでも変わらず、涼しい顔をしているが、声色が少し緊張感のある声に変わっていた。
「今日は皆さんの成績お呼びにこの学校に残れるかを決める大事な試験となります。これまで、やってきた知識を活かして、この学校に1人でも多く残っていることを期待しています!それではもう10分ぐらいしたら試験専用の会場に移動しますので、必要なことを済ませて10後には席につい
ておいてください…………………………以上です」
先生が言い終わり、質問する暇もなく教室を後にするとEクラスはトイレに行くなり、必要なものをカバンから取り出して整理するなりして、その少ない時間を過ごしていた。山添くんはなぜかどこかもわからない神様に祈りをささげまくっている。笑ってはいけないのに少し表情が和らいだ。こう周りを見ていると、自分が落ち着いているのがよくわかるというか怖いくらいその慌てている状況を味わっている。その短い時間も終わり、試験会場へと足を運ぶ。その部屋は今まで入ったことのない半分上が黒で半分下が白のツートンカラーになっていた。
「これより、試験の説明を始めます!席に着くように1限から5限まではこのスケジュールで行きます。よく時間を確認しておくように!それから、みんなには、今年からルールが変わるという事もあって、テストが終わってから時間が余り次第の離籍は認めず、万が一何かあった場合は事務員に伝えて1限につき1回までの離籍を許可する。それではテストを開始するので、席に座ってください」
まずは、国語の試験から始まる。事務員の人たちが解答用紙と問題用紙を一斉に配り始めて、いよいよ試験がスタートした。
「制限時間は60分タイマーは前の電光掲示板に表示してあるため、それに従う事」
それぞれがページを開く音がして、みんな一斉に息をのむ。まず、回答欄にある枠の数が漢字や語句問題で25問、文章を読んで解く問題で12問が示されている。最初の漢字や慣用句、四字熟語にことわざ類の合致問題は難なくクリアできた形だが、みんなが驚いた点がなにかすぐに分かった。文章問題の文章の多さだ。全部で10ページ分はある。ここから問題を抜き出していくのは大変だろうと思う。それ今回はグラフやデータがあってややこしい分、それを使った問題が4,5問出ている。私は心理的なものは今回関係ないと読み、実際に文で書かれている町のデジタル化についてその町の変化について、重要な点をピックアップしていくことにした。関連しそうなワードを探してはマルをする。問題文と照らし合わせて、それらしい語句や表現などを引っ張っていく。1問1問慎重に解いていき、確実に正解となるものを探していく。残り10分になったとこで慌てて解いた結果分からなくなり、結果2,3問を捨ててしまうこととなった。
試験の1つ目が終わり休憩の時間に入る。Eクラスの生徒はモヤモヤッとした気分でいたに違いない。そんな悲観的な声がちらほらと聞こえてくる。
「最後の問題って何点だっけ?さすがに10点とかそんな配点にはなってないよね?」
最後の数問を落としてしまったものの後の問題はイメージ通りの流れていけたため、8割方しっかりと確認出来ていた。
「これはそんなにひどくない、大丈夫、ふ~~~」
自分を落ち着かせるように嫌な気持ちを取り払っていく。ここでアナウンスが流れる。
「開始3分前です、数学のテストが始まります!皆さん席についてください!」
その合図と共にほとんどの生徒は自分の席に戻る。こころを落ち着けて次は数学を解く準備をする。
「それでは事務員さん配ってください」
アナウンスの合図と共に事務員が解答と問題用紙の両方を配り始める。
頭の中で式をあらかじめ置いておく。そこまで次は焦ることもない、自信のある科目。だが、その自信は問題を見た時に消え去って行った。10問が基礎のいたってシンプルな問題。その後に応用の問題が20問用意されている。左上の解答用紙を見ると、基礎が2点、応用が4点の配点なると書かれている。これは応用を解かなければ、確実に退学行きの問題だった。自信が少し消えかけていたものの雨音はそこまで難しく考えず、冷静に解いていく。苦戦している者とスラスラ解けている者がハッキリと分かれる問題になっているようだ。
「こことここは解けるから先にパパっとやって、最後の2問はとてつもなく難しい問題だから無駄に時間を使う必要はなし、か……。」
ぶつぶつ呟いて、減点のリスクを最小限にしていく。案外頭の中で2,3問なら並行処理していけるようになっていた。これも想像の学習法がプラスに働いたのかわからないが、形式が同じ問題というのは頭の中のメルヘンくんたちが数学の世界で作業のようにそれを解く。
「そこはここの数値を入れないと解けないっプル」
「あ~、間違えたプル。こっちの問題に人数をよこして欲しいだっプル!」
「そこはさっき使った問題の答えをこっちに移行するんだっプル!」
頭の中のギアが一気に上がっていき、残り4問で20分となる。これまで余裕がなかったような問題も自分の脳内のメルヘンワールドを拡大していくことで、冷静に問題をこなすことができる。しかし、いくら想像とはいっても、自分の頭の中もリソースの限界があるので少し休めるようにゆっくり目のペースで解く。残りの問題が最後の2問になったところで、ほとんど解けるか分からないような問題だったこともあり、頭を次の科目に回すため、ここは文章を読むだけにとどめておく。もし、解けるなら解いてしまおうと思ったが、残り5分を切ったことで数学のテストは終了した。
「あ~あ、全然解けなかったや!」
CやDクラスではちらほらそのような声が聞こえてくる。しかし、もっとひどいのはもちろん、私の周りのEクラスだ。
「やばい、これ25点分取れてるかな⁉」
「もしかしたら、私応用の問題何問か解けてたかもしてない!あともうちょっと時間があったらな~~~」
そんな声がちらほら聞こえているが、応用が2,3問できたぐらいじゃ、全然退学県内だと思う。そう、思うと雨音は自分の胸を撫でおろし、安心して点数が採れているだろうという事に自信が戻ってくる。テストはまだ半分も行っていないが、雨音は少し安易な気持ちに浸っていた。次の試験は英語の試験でリスニングが込みになっていたので、席に着く時間が少しだけ早かった。先ほどと同じようにアナウンスが流れる。
「英語の試験が開始されます!皆さん席についてください!最初はリスニングから始まりますので、リスニング用の1ページ目を開いて待っていてください!」
何も書かれていない1ページ目を開いてふと思った。リスニングを今までまともに練習したことなどあったのだろうか?いや、連想し会話を繰り広げている時に自然としていたじゃないか、そう焦ることはない。だが、Eクラスの生徒はどうだろうか授業ではなかったものの、課題のようなものでは出されていた気がする。確か…………………………あれは、先週のいきなり学校が休みになる1日前だ!
……ってことは、伸びしろもかねてあの4日間を開けていた可能性もある。どちらにしろ定期試験の前準備をしていて正解だったということだ。正直、今の時点でかなりEクラスの生徒は参っているだろうが、ここまで来れば後はやるしかない。
「それでは、英語の試験を始めていきます!リスニング、クエッスチョン1この問題は絵の中の~~~」
始まってから頭の中にスラスラと英文が、自然と同化していくような感覚にゾワッとする。書き進めて、慌てずそして確実に必要になってくる言い回しがそこらに転がっている。それを掴んでは問題のヒントに……………………リスニングの問題が終わって次は長文の問題にシフトする。ただひたすら読むだけじゃないとわかった。それは効率が悪いと、解けるように問題の読み方やフレーズの特徴を頭に入れ、しっかりと問題と長文を見比べてみる。勝手に手が動いて空白だった部分が埋まっていく。時間いっぱいに使うことなく、10分前にはテストが終わっていたため、確認し一息つくとちょうどいい時間になっていた。
「これで、英語の試験を終わります!休憩を10分間設けます!」
疲れた頭をほぐし、次の試験に備える。AクラスやBクラスの生徒も余裕の顔が少し、真剣になってきた。席について試験が始まるまで、テストの出題の仕方を想像する。アンチ先生が出すとされている会話ベースの試験。そこから、考えて様々なパターンを想像していく。これだ!と決めつけるわけにもいかず、それはふたを開けてからのお楽しみというやつだった。
「あ~~、早く終わって欲しい、ちょっとお腹すいてきた~~~」
さすがにずっと考えていたので、糖分が足りなくなってくる。ここからはどこまで気力を持たせられるか、お腹が空腹状態を知らせるまでに早く終わらせるかの勝負だった。
「それでは社会(歴史)の試験を始めます!自分の席に戻ってください!」
早速開始からの会話文。ほとんどのページが会話文で構成されている。アンチ先生の問題は最初はシンプルで段々と面倒くさくなってくる。時間の後半になっていくほど、ため息が多くなっている。これもこの文の効果なのかもしれない。今までいたメンツにさらに2人追加されて困り果てている。私も最初は困っていたが、全部を一通り読んでみるにつれ、そこまでの複雑さはないと感じた。一生懸命に解いては、思い出してを繰り返してアンチ先生の試験が時間ギリギリで終わって、そのまま机に倒れ込んだ雨音だった。
「これで社会(歴史)の試験を終わります!昼休憩を1時間はさんでまた元の位置に着席しておいてください」
残りはあの化学&生物学のダブルだ。社会の試験が終わった後、雨音は早歩きでEクラスの教室に向かってゆく。終始お腹が鳴りっぱなしで恥ずかしかったこともあって、ご飯を急いで口の中に入れる。
「ゴホゴホッ、ん~~~つまっちゃった、ハ~~~ゆっくりするのが一番か~~~」
さすがに慌てすぎなことに気付き、食べ終わった残りの時間は次の試験の予想を組み立ててゆく。先生の話によると、ひっかけ問題がある程度の数出てくるようだ。しばらく考えていると、お腹がなり、そのままなり続けて危険なシグナルを感知した。
「う~~~ん、お腹痛い!」
テストに緊張していたストレス的なものが今になって積み重なった状態で押し寄せてきたみたいだ。これまで、順調に進んでいたものが一瞬で不安の対象となり、雨音は焦り始めた。
「どうしよう!後10分ぐらいで試験が始まっちゃう、先生に申し訳ないし、早く直さないと……………………」
腹痛がそんな都合よく治るわけでもなく、急いでトイレに駆け込む。誰も何もそのことに耳を傾けていた生徒は居ず、そのまま理科の試験が始まってしまう。亜白木先生はというと…………………………。
「1人うちの生徒が居ないのですが、帰ってくるまでテストは時間通りで構いませんので、受験できる形にしておいてください」
「わかりました。ですが、規則は規則なので……………………もし、試験時間内に帰ってこない場合はよろしいですか?」
「はい、それは構いません。そのことだけ守っていただければ、結構です」
試験に関しては亜白木の方で手回しが自然となされていたようで安心だが、どの道、今危うい状態なのは変わりない。
「…………………………ッタタタタ、どうしたら、治ってくれるかな?」
そのまま刻一刻と時間は過ぎていく。こうした時、どうするのがいいのか雨音は初めての感覚に戸惑っていた。もちろん、過去にそう言った経験はあったものの、状況が違った。ただ時間が過ぎれば、治っていくものだったが、今はそんなことをしていられない。何か温めるようなことをしたって、気持ち楽になるがすぐに波が戻ってくる。そんな時、何かをひらめいた雨音はすぐにそれを実行する。
「全然楽じゃない!これだったら戻って、試験を再開できる!早く急がなきゃ!」
さっきまで苦しかったのがウソのように痛みが引いていく。それは単純な事、気持ちが沈んでいたならば、そんな状態消してあげればいい。そう、その瞬間だけ、ポジティブに考えることにした結果、再び試験会場へと小走りで駆け込んだ。
「ス~~ハ~~~、やっと、ついた!」
日頃運動していない雨音からしたらこれぐらいの距離でもばててしま
う。目の前の扉には事務員の方が1人ぽつんと立ってこちらを見ている。
「すいません、体調が回復したので、ここに急ぎできたんですけれど、まだ中に入れますか?」
そうすると、事務員の人間は少し顔を和らげた後、雨音を通してやった。試験会場の電光掲示板を見ると30分と表示されており、半分の時間で問題を抜粋しながら解かなければならなかった。早速開いて、どんな問題があるか、確認する。予想していたものと然程変わらず、少しは落ち着いてから、解き始める。脳内に潜んだオタクくんたちが協力してくれている。こんなにも頼もしいと感じる瞬間はなかった。
「この問題ですが、解きやすいですよ!」
「僕はけっこうな確率でこの問題が解くの早いと見込んだんだけど、どう?」
何人かの協力で倍速のスピードで問題をかたずけていくことができる。順番に解いている余裕なんてない!この短い時間にすべての気力を使う!
「そんなに急いで解いたら、頭が破裂してしまいますよ、雨音殿⁉」
いつしか、頭の中の声も無視して全力で問題に噛り付いていた。
「う~~~んと、この問題はさっきのと似てて、次のは完全に別の問題だからパスしよ」
数少ない中でも、自分の得意不得意を分けて着実に解答用紙が埋まっていく。残り5分を切ったところですでに5,6割は埋まっていたものの、まだあきらめない精神が雨音を加速させる。
後は応用にあった問題だけど、私のぱっと見じゃ、さっきやった問題と見たようなものがある!後解けて1,2問まずはこっちから!以下の生物において、共通するものとそうでないものの組み合わせとして正しいものを一つ選びなさい。こんな問題が出ると時間がないと思うのが大抵の人間だが、雨音には脳内に大量の学習した情報が濃縮された状態でそのまま、知識で取り出される。
消去法で答えが確定されるのがほんの一瞬だ。化学においてもそうだ。頭の中にとある図のようなものを思い浮かべて、反応を確かめていく。普通は1から5の反応式を最初から順に解いていかなければならないが、それをせずとも全体図が頭の中に入っているのだから一瞬にして答えを導くことができた。その後、解こうとするところで、タイムアップの状態になってしまい。
結果、7割方解けていたことに終わってから気付き、安堵感がド~~~ッと押し寄せてくる。
「これにて試験を終了します、皆さんお疲れさまでした!」
アナウンスが流れるとともに事務員の誘導と共に元の教室に戻ってくる。
雨音は疲れ切ったのもあり、半寝の状態でフラフラ~っと前について行った。それから家に帰った2日後の日に試験結果が各クラスの教室に張り出される。それまでは久しぶりに溜まってた推し活動にようやく再開し幸せの時間もあっという間に過ぎていった。
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