第11話 ラッキースケベから彼女たちを守り抜け!

「ついて、しまった。何かいわくありげな怪しい館」

 

 見た目は西洋風の白い壁が美しい豪華な二階建ての館だ。

 普通ならこんな立派なところに泊まれるのかと喜ぶのだが、今回はそんな呑気に事を構えることはできない。

 非業の死を遂げたとある大富豪の館。

 そして、大学生サークルやオカルト研究会などの物好きが宿泊していたという。そして翌日には必ず警察が来ているというどう考えても何かがあるとしか思えない場所だ。


「本当にこんな呪われてそうな場所で呪いを解くとかできるの?」

「んー? なんとかなるんじゃなぁい? それに館の呪いがあるのなら私の力がどこまで通用するか試してみたいなぁ」


 ここにいるのは幼馴染姉妹の伊藤さんと飛鳥姉さん。

 唯一僕と同じ感想を持ってくれている伊藤さん。

 そして物騒なことを言い出す飛鳥姉さん。

 僕が合わなかった9年間で一体飛鳥姉さんに何があってこんな武闘派になってしまったのかは永遠の謎だ。


「血塗られた惨劇の地。ああ、聞こえる。惨劇の足音が! 主よどうか我らに加護を。呪いを打ち破れる力を……ちゅ、ちゅべたい!」


 意味深なセリフの途中で、池に足を突っ込んでしまう。金髪美少女シスターのミスティーちゃんは涙目になってしまった。

 怖さやミステリアスさよりかわいさが、際立つ。

 僕の心の安定剤的存在だ。


「コココ・ヒュー・。コココ・ヒュー。コココ・ヒュー」


 最後に一番謎である意味現実的に恐ろしい存在。

 呼吸音で独特のリズムを刻みながら、館を見てうんうんと頷いている。

 ガスマスクと防護服という重装備の舞元さん。

 かわいいとの噂だが、このガスマスクでは顔は全く分からない。防護服だからスタイルもよくわからない。謎、謎、謎の存在。

 この村では、この呼吸音会話は常識だそうだ。やっぱりわからん。

 あと、隔離地域に普段いるってことだったけど本当に大丈夫?

 パンデミックとか発生しない?

 すごく怖いのだが。

 

「あの今日は五人で、この館のどこかの一室で一晩一緒に過ごすんですよね? それで呪いは解ける、ということでいいですか?」

「そうらしいわね。呪いのことは正直この村の風土病っていう説もあるから詳しいことはわからないけど」

「けど、年の近い男女5人で一室一晩一緒に過ごしたら、呪いは解けるのは町がないわよぉ。ねぇ皆?」


 飛鳥姉さんの問いかけに全員頷く。

 意味不明な呪いだが、実際呪いの効力は確かにある。不自然なまでに、どこかの漫画の主人公のごとくラッキースケベが襲い掛かってきている。

 今までは呪いに成されるがままだった。

 だけど、これからは違う。

 僕はとある決意を胸に秘めていた。

 それを今言葉にしようと思う。


「皆さん、聞いてください。たぶん、いいえ絶対にラッキースケベの呪いで皆さんにご迷惑をおかけしてしまいます。だから僕はこの呪いに抗ってみようと思うんです」


 全員不思議そうにしていた。


「そんなことできるの? 第一どうやって?」


 伊藤さんの言うことはもっともである。

 呪いなんていう抽象的な存在に抗うことなどできるのかという当然の疑問だ。


「具体的にどう抗うかはまだわかりません。呪いってどんなに接触を控えようとしても、何らかの力でラッキースケベを引き起こしちゃいますすし」


 例えば女の子を危ない状況になり、僕が助けにいかないといけないパターン。

 現に商店街では見知らぬお姉さんが高台から落ちそうになって助けようとしたらラッキースケベが発動した。


「一晩、私たちが耐えれば済むこと。幹也お兄さんは気にしなくてもいい。それに迷える子羊に手を差し伸べることは私の責務の一つ。どうかわたしを頼って」


 ミスティちゃんがうれしいことを言ってくれる。

 けど、それじゃあだめなんだ。

 僕は受け身ばっかり。自分で努力をしようとしない。迷惑をかけっぱなしでは自分で自分が許せない。

 それに好きでもない男にあんなところやこんなところを触られるという苦痛をこのやさしい女の子たちに我慢させるなんてあってはならないことだ。


「その言葉はとてもうれしいです。でもみんなに頼ってばかりで僕は何もしないなんて耐えられない。僕のような男がみんなみたいなかわいい子を汚すなんてことあっちゃならないんだ!」


 僕の意外な熱の入りように全員驚いていた。

 理由はわからないけどただ一人、伊藤さんだけは深刻そうな顔をしていた。


「だから僕はこれからこの呪いに抗う。この呪いの魔の手から君たちを絶対に守る。これは僕の一方的な誓いだ」


 これが呪いを解いてもらうために協力してくれる心優しい彼女たちにできるぼくからの精一杯の誠意だ。

 


※※※※


「厄介なことになってしまった」


 館の前での彼の誓い。

 女の子たちを呪いから守るというすばらしい誓いだ。

 でもそれは困る。

 彼にはラッキースケベの呪いに堕ちてもらわないといけない。

 そしてその思春期男子の強力な性欲に身を任せてもらわなければならない。


「だが、この呪いは強力だ。どんなに抗おうが、ラッキースケベを回避するなど不可能! せいぜい足掻くがいい。そして俺の計画の礎になれ!」


 くっくっくっ……。あーはははっははは!

 さぁ、俺と幹也。二人の戦争の始まりだ!

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