ちっちゃいギルド長

ポータルを潜り抜けると、そこには大きな部屋があって、何人か冒険者のような人たちがそこで談笑をしていた。

結構すぐだったな。思ったより怖くない。ここは冒険者ギルドの中なのだろうか?

部屋を見渡していると、


「こちらです、ついて来てください」


と、ドアのほうでさっきの女の人の声がした。

別の部屋に行くのだろうか?


「は、はい」


俺は彼女についていった。しばらく歩くと、デカいドアの前に来た。


「こちらです。ギルド長がお待ちしております」


そう言い、彼女はドアを独特なリズムでノックした。

すると、


「はーい」


と子供の声が中からしたかと思うと、ドアがゆっくりと開いた。

俺はピシッと背筋を伸ばしてドアの先を見ると...

誰もいなかった。

そこに人が立っていると思っていた俺は、思わず


「あれ?」


と声を出してしまった。

すると、


「おい!どこを見ているんだ!こっちだこっち!」


と、足元から声がした。

驚いて下を見ると、ちっちゃい女の子がこちらを見上げていた。


「おぬし、今わしのことをちっちゃいって思ったのう??」


...驚きすぎて口が塞がらない。どう見てもちっちゃい女の子なのに、なぜ口調はおばあちゃんなんだ。

俺はしゃがんで、このちっちゃいギルド長とやらに話しかけようとすると、


「しゃがむでない!」


と、脛を強くけられた。

いてぇ!このちっちゃい体でどうやってそんな強いキックが出せるんだよ!

俺は痛さに悶絶していると、


「入るのじゃ!おぬしにいくつか話したいことがある。そこに座るとよい」


と言い、彼女は部屋の奥にある椅子に座り、机に手を置いた。

俺が部屋に入ると、後ろのドアが大きな音を立てて閉まった。

とりあえず言われた通り、彼女のいる机の目の前にあるソファに座った。

俺の目線では、彼女の頭が机の端からチョンと出ている。


「さて、おぬし、フェルノックを倒したというのは本当か?」


いつ知ったのだろう?もう一人の女の人が教えたのだろうか?いつ?


「は、はい」

「どうやって?フェルノックはおぬしのような貧弱には倒せんぞ」


と、彼女は俺の身体つきじっくり見て言った。

貧弱とは失礼な。これでも毎日筋トレはしている。ちょっとだけ。さぼらなければ。


「えっと、スキルを使ったらなんか倒しちゃって...」

「スキル?フェルノックを一瞬で倒せるようなスキルなんぞ生きて来て一回も聞いたことがないぞ」


生きて来てって...この子一体何歳なんだ?それを聞こうとすると、


「女性に年を聞こうとするのは失礼じゃぞ!そんなことよりなんというスキルじゃ?何ができる?」


と、彼女は体を乗り出して聞いてきた。


「えっと、料理強化です...」


ん?ちょっと待て、なんで年齢を聞こうとしてるのかわかったんだ?


「ふむふむ、料理強化か。ふむふむ、ん?ふむふむ面白い。おお!すごいのう...」


彼女は俺を凝視しながら、ふむふむ言っている。何をしているんだ?


「大体分かったのじゃ。おぬしのスキルはあれじゃな、いい加減じゃな。いい加減すぎてもはや作ったやつも制御できんようになっとるわい」


...?全然話についていけていない。なに言ってんだこのチビ。


「チビとはなんじゃ!」


テーブルの下でまた脛を蹴られた。

痛い。


「わしのスキルじゃ。千里眼という。ほぼ何でも見透かせるのじゃ。便利じゃぞ」


自慢そうにスキルを紹介された。

最強じゃね?人の考えてることでさえ見透かせるのかよ。こわ。


「怖くない!わしは優しいのじゃ!」


そう叫んだあと、


「このスキルがあれば悪人か善人かをすぐ見分けられる。そしてお前は後者じゃ。フェルノックを倒したのも嘘じゃないようじゃの。そのスキル、どうなってるのかわからんが、どうじゃ、そのスキルを使ってわしのために働く気はないか?礼はたんまりするぞ」


そう言って彼女は手を組み、ポーズを決めながら俺に聞いた。

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