連行される~

ハンバーグを食べた後、エルナは意識を取り戻したようで、目の前にあるハンバーグをがつがつ食っている。


「よくそんなに食べられるな」

「ほんはひふはいほほはへはほほはひほ」

「なんて?食ってる時に話すなよ」


エルナはハンバーグをごくりと呑み込むと、


「こんなにうまいものは食べたことがないよ!これ本当にあのでっかいフェルノックかい?君が料理したらこんなにうまくなるんだ!」


そんなに褒められると照れるな。俺が作ったわけじゃないけど。


「それに、やっぱり何か効果がついてるみたい。えっと、炎無効、炎属性攻撃強化XL、攻撃力増加XC、防御力増加XC、威圧X......多すぎて言いたくなくなっちゃった」


おい。だが、確かにステータス画面を見てみると、右のほうが料理バフで埋め尽くされている。

見にくい...

強い魔物を倒したら効果量も多くなるのか?


「んで、効果時間は......五時間越え!?相変わらず信じられないね!強すぎるでしょ!この量のバフ、効果時間、一生ダンジョンに潜ってられるんじゃないかい?」


ん?おかしいな俺の効果時間は五十分程度だぞ?

...あっ、こいつさっきいっぱい食べてたからか?バフって重複できるのか?強すぎないか?


「それにしてもどうやって倒したんだい?君そんなに強かったのかい?」

「うーん...俺が倒したといっていいのかわからないな正直。俺の体がスキルに乗っ取られた感じだ。」

「......そうなのかい?使用者の体を乗っ取れるなんてスキル聞いたことないけど。それに君のスキルは料理強化じゃないのかい?」


さっき同じことをアルデンにも聞かれたな。


「なんかフェルノックを調理するって言ったら倒して調理しちゃった」

「......なんなんだい?君のそのスキル。判定ががばがば過ぎてもう笑うしかないぞ」

「ははは...」


しかし減らないな。さすがにこの量のハンバーグ、エルナがいっぱい食べてるが、それでも食べきれる気がしない。


「このハンバーグたちどうしようか。このまま置いておくのはもったいない...」


するといきなり


「あなたたち大丈夫ですか!?」


と後ろから声がした。振り向くと、そこには十人ほどの冒険者らがいた。


「先ほど、こちらのほうから聞いたことのない咆哮が聞こえて...」


...あぁ、さっきのフェルノックのことか。


「さっきフェルノックがいたんですよ。何とか倒せましたけど」

「...え?フェルノックってあの?倒した??四人で??...本当ですか??」

「はい」


後ろにいた人たちも驚いているようだ。と、ここでいいことを思いついた。


「あの、ここにフェルノックのハンバーグがあるんですけど、一緒に食べませんか?宴会みたいに皆で」

「...は?フェルノックのハンバーグって...何を言ってるんですか?まさか、フェルノックをハンバーグに調理したんですか!?」

「はい!」

「...信じられませんね。あなた方がフェルノックを倒し、調理した。こんな事初めてです。もしそれが本当なら、そんな実力を持っていてなぜ最上層にいるんですか?」

「今日初めてダンジョンに潜ったので...」

「......」


どうやら開いた口が塞がらないようだ。


「あの、ハンバーグ...」

「...あぁ、はい。宴会ですね?私たちはフェルノックを討伐するために来たんですけどもう倒されているようですし...この量のハンバーグはあなた達だけで食べきれるようには見えませんね。しかし、このハンバーグ食べて大丈夫なものなんですか?」

「はい、さっきいっぱい食べたんで」

「そうですか。なら大丈夫なんでしょう。この近くには魔物がいないようですし宴会をしても大丈夫そうですね。」


そう言い、彼女は後ろを振り返り、


「あなた達!よく聞きなさい!フェルノックはもう倒された!これ以上ここにいても意味はないけれど、この人たちがハンバーグをご馳走してくれるそうよ!ここにあるハンバーグを完食してから上に戻るわよ!」


と男達に叫んだ。すごいな、この人偉い人なんだろうか?すると、


「あなた達は後で私について来てもらうわ。色々聞きたいことがあるので」


と俺達に言った。なんだろう?フェルノックについてだろうか?


「いただきます!」


ハンバーグのほうから声がした。見てみると男達が食べ始めたようだ。みるみるうちに減っていく。

すげえ。

しばらくした後、急に男達がざわつき始めた。

どうしたのだろう?


「おい、どうなってんだこれ?まさかバフか?この飯、バフがついてるのか?こんなん見たことがねえぞ!」


あ、やべ、言い忘れてた。

男達の声を聴いた後、さっきのボスみたいな女性が俺に近づいてきた。


「これはどういうことですか?なぜバフがついているのですか?」

「えっと...なんかついた」

「......答えるつもりがないのですね?いいです、今すぐついて来てください。地上に戻ります。あなたたちはそのまま食べていてください。私はこの男を地上に連れていくので」


え?え?俺連行されちゃうの?何かした?いや、バフのこと言わなかったのは悪かったけど。

俺はエルナをちらりと見て助けを求めると、


「じゃあねー、後でまた会おうねー」


とのんきに手を振られた。だめだ、こいつ役に立たねえ。

そうして、彼女は俺を抱えて近くにあるらしいポータルへと走っていった。

すげえ力持ちだな!どこに行く気なんだよ?

そうして俺は彼女に連行されていくのだった。

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