どこまでが料理関係!?
スキルを発動した直後、俺の体はいきなりアルデンの落とした長剣のほうに走り出した。
おいおいおい、まさかスキルが俺の体を乗っ取れるなんて聞いてねえよ!
何をするつもりなんだ?
俺の体は剣にたどり着くと、地面に落ちていたかなり重そうな剣をいとも簡単に拾った。
え?まさかこのスキル、フェルノックを倒す気じゃないだろうな?
その予感は当たり、俺の体はまっすぐとフェルノックに走り出した。
フェルノックは俺の行動が予想外だったのか、戸惑っているように見える。
だが、フェルノックは俺に開いた口を向け、喉を光らせ始めた。
まずい!火の玉が来る!
そう思った次の瞬間、俺の体は空高くジャンプした。
ビュン!!
俺のすぐ横を火の玉がすり抜けていき、俺がさっきいた場所に当たった。
ヒェッ! こわ、絶対今避けなかったら即死だっただろ。
俺の体はジャンプした勢いをそのままに、剣をフェルノックの首に向けて突っ込んでいった。
その時、逆鱗が見えた。首の真ん中あたりに逆になっている鱗がある。そして...
グサッ!!
俺の握った長剣は、逆鱗を一瞬で貫き、フェルノックは鳴き声を上げることなく倒れた。
『討伐完了、スタミナ満点フェルノックハンバーグ調理に入りますか?』
......早すぎないか??いや、その前に討伐した!?あり得ない。アルデンとレイデンを一瞬で倒したんだぞ!?
『調理を始めますか?』
スキルが急かしてくる。正直全然気持ちが追い付いていない。が、それ以外に出来ることもないのか。
「はい、調理します...」
そう言ったら、俺の体はまた動き出した。
剣をフェルノックの首から引き抜いた後、フェルノックが眩く光った。
!?何事!?
そして次の瞬間、目の前には茶色い山があった。
なんだこれ?急に目の前に現れた山に戸惑っていると、ふんわりといい香りがしてきた。ハンバーグの香りだ。
ん?まさかこの山、ハンバーグか?多くね?
いや、確かにあのデカいフェルノックを全部ハンバーグに調理したらこうなるか...
っていうか料理一瞬でできるんだったな...どんなにデカくても一瞬なのか...
『調理完了しました。』
『レベルアップレベルアップレベルア.......』
その声が頭に響くと同時に、急に倦怠感が襲ってきた。
なっ!?やばい、あの時と同じだ。倒れる!ハンバーグを食べたら何とかなるか?
そう思い、目の前にあったハンバーグを掴み、口の中に放り投げた。
嚙んだ瞬間、肉がホロッと崩れて、じゅわっと肉汁が口の中にあふれ出てきた。
熱っ!!
口の中火傷する!
と思ったら、倦怠感がどこかに行っている。それどころか、力が溢れる感じがする。おぉ!すげえ、流石スタミナ満点フェルノックハンバーグ。超うまい。
もぐもぐもぐ...はっ!!アルデンとレイデンにも食わせなければ!俺は急いでアルデンとレイデンのもとへ駆け込み、口の中にハンバーグを詰めた。
死んでないといいが。そう思っていると...
...ぐふっ!...モグモグ...そしてハンバーグは一瞬で腹の中に消えていった。
......!? バッ!!
「リュウマ!?俺は何を...なんだこれうまいぞ!っていうか俺は死んだんじゃなかったのか?」
「リュウマ!?フェルノックは?フェルノックはどうなった?」
何と言えばいいのだろうか?俺が倒した?なんか違うような気もする。まあいいや、
「俺が倒した。お前らが食べたのはフェルノックのハンバーグ」
「...!?すまん、ちょっとなに言ってるかわからない。お前が倒したのか?どうやって?」
「...スキルで?」
「...信じられねえな。お前のスキルは料理強化だろう?どうやってそのスキルでフェルノックを倒せるんだ」
「俺にも分からない。何か出来たんだ」
「......そうか。まあさっきからよく分かんねえことばっか起きてるから信じるしかねえな。エルナはどこ行った?」
...あ。忘れてた。さっきあそこで立ち尽くしてたけど...
さっきの場所に目をやると、エルナはまだ突っ立っていた。
何してるんだ?
「おーい、エルナぁー」
気になって声をかけると、返事がない。
どうしたんだろう?エルナに近づいて、手を目の前で振っても、動かない。
まさか、気絶してるのか?
アルデンは
「はっはっは!立ったまま気絶するなんて器用な奴だな!」
と、大笑いしている。
とりあえずハンバーグでも食べさせるか。それからいったん休もう。
そう決めて、俺はまたハンバーグの山に手を伸ばした。
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