一瞬でやられる仲間
ダンジョンに入って30分。目の前にはデカすぎて頭を天井にぶつけているトカゲのような生物がこちらを睨んでいる。退路が塞がれて、逃げることもできない。
「どうすればいいんんだ!?このままじゃ死ぬぞ!!」
「逃げるしか選択肢はないだろう!」
「フェルノックの下を通ってか?無理に決まってる!」
「どうにかするしかない!こうなったらもう戦わなければ!」
「......そうだな、戦う以外選択肢はないか...」
俺が考えている間に、アルデンとレイデンは、戦うと決めたようだが...
俺はこいつらがこのデカいトカゲに勝てる気がしない。
「ちょっと待て、戦ったところで勝てるのか?」
「......おそらく無理だろう。だがやらなきゃどうせ死ぬ。なら一握りの希望に賭けるしかないだろう!幸い、俺達には食事バフがついている。それに、こいつにも弱点はある。顎の下だ。顎の下には逆鱗と呼ばれる竜の仲間に共通する弱点がある。そこさえ突ければ倒せるんだ。この剣で突いてやるよ!」
逆鱗?確か逆さになった鱗のことを言うんだったか?
俺は逆鱗を探そうとフェルノックを見上げたが、とても探せそうにない。うろこに覆われていてどれが逆さかなんて分かるわけがない。
「いくぞ!!アルデン!」
「ああ!!死ぬなよ、兄貴!!」
「それは約束できねえな!」
そういい、アルデンとレイデンはフェルノックに突進していった。
すると、
「ギィ―――――――――――ッッッ!!!」
フェルノックは敵意を感じ取ったのか、目を光らせ、口を開いた。
フェルノックの喉が、深紅に染まり、次の瞬間火の玉がアルデン目掛けて飛んで行った。
「!?」
アルデンは急停止し、後ろに避けた。だが、
「ドゴォォォォーン!!!」
火の玉がアルデンのすぐ目の前で着弾し、爆発した。
爆発により舞い散った塵の中から、アルデンが横に吹っ飛んでき、壁に体を打ち付けた。
「がはっ.......!!!」
そして、アルデンは動かなくなった。
「アルデン!!!」
そうレイデンが振り向いた瞬間、フェルノックの鞭のような尻尾が、壁を割りながらレイデンを吹っ飛ばした。
レイデンも壁に体を強く打ち付け、動かなくなった。
なっ......!?
アルデンとレイデンが一瞬で?俺より3倍も体力のあるあいつらが?
食事バフ付きでも勝てない、フェルノックの強さはそれ程までに圧倒的であった。
どうすればいいんだ?エルナを見ると、恐怖のあまり、動けないでいる。
フェルノックは二人を倒した後、俺たちがあまり強くないことを理解したようで、今度は俺たちを標的に決めた。
もう、ダメだ。俺はまた死ぬのか。腹が減って死ぬわけじゃないだけマシか?
そう諦めた瞬間、
『フェルノック。竜種。ダンジョンの中層以下に生息しており、狭いダンジョンで機動力が削がれるため、翼を持っていない。その見た目から、通称トカゲと呼ばれている。』
と、頭の中で声がした。さすがに俺も馬鹿ではない。何時間か前にもこんなことが会ったような気がする、これは料理スキルだ。料理スキルが俺に話しかけているんだ。
だがなぜフェルノックの情報を教えてくれるのだろう?そう思っていると
『調理方法:フェルノックの逆鱗を突くと、簡単に討伐することが出来る。だが、失敗すると激怒するので気を付ける事。討伐後、発火器官を冷ますため一時間ほど置いておく。後は調理したい料理によって調理方法が変わる。』
『調理可能な料理:フェルノックステーキ、フェルノックのバーベキュー、スタミナ満点フェルノックハンバーグ、フェルノックの角煮など。』
......とてもおいしそうな料理達が頭の中に浮かんでくる。今なんか特にフェルノックのハンバーグを食べてスタミナを回復したいものだ。そんなことをのんきに思った次の瞬間、
『スタミナ満点フェルノックハンバーグを調理しますか?』
ん? ”調理しますか?” だって?どうやってやるんだ?ここに食材はないぞ?
まさかとは思うが、生きている生物を自動調理できるとでも?しかも、こんなデカい生物を?
俺が混乱していると、俺たちを睨んでいたフェルノックは口を開け、喉を赤くし始めた。
くっ...迷っている暇はない。ここは料理スキルに賭けなければ。
「はい、調理します!」
すると、俺の体は、俺の意志無しで動き出した。
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