異世界、初料理。

しばらく歩いた後、俺たちはダンジョンと呼ばれる場所に着いた。


「ここがダンジョンだよ!この下には怖ーい魔物たちがうじゃうじゃいるんだ。下のほうに行けば行くほど、どんどん魔物が強くなっていって、底はないといわれてるんだ!よくぐちゃぐちゃになった死体が落ちてるらしいよ!怖いだろう!」


落ちてるらしいよ!じゃねえよ。やばいじゃねえか。行きたくなくなるわ。俺は怖いのが苦手なんだ。よくそうは見えないといわれるが、そんなことはない。人を見た目で判断しないでほしい。


「あ、ああ。だ、だ、大丈夫だ。そんなことより厨房はどこに?」


俺が怖そうなのを見るとエルナは満足そうに尻尾を振りながら


「厨房はあっちにあるよ!」


といった。

エルナの指さすほうを見ると、物騒なタトゥーの入った屈強な男たちがバーベキューをしていた。

近づいても潰されないだろうか?


「そこのマッチョ君たち!そこの空いてる厨房を使ってもいいかい?」


と、エルナはいきなり男たちのもとへ駆け寄り声をかけた。

勇気のある子だ。そう思っていると男たちはこちらをにらんできた。

やばい、怒鳴られる!と、身構えた瞬間、


「兄ちゃんたちなに作るんだい?手伝ってやろうか?」


うん。普通にいい人たちだった。ムキムキマッチョのタトゥー男たちがそんなこと言うとは。

男たちは調理器具のセッティングや、用意などを手伝ってくれた。


「兄ちゃん料理できるのか?何作るんだ?」

「コンフィっていう食べ物を作るんだ。こいつが食べたいって言いだしたんだけど、お前ら知ってるか?」


もうお前らと言い合える仲である。異世界人、コミュ力高くね?


「いや、初耳だな。俺たちの分も作ってくれよ」

「ああ、もちろんだ。二人じゃ食べきれないぐらいはあるし、ちょうど何か礼をしたいと思ってた」

「ありがとさん。助かるぜ」


てかこいつらさっきバーベキュー食ってなかったか?胃化け物かよ。

そんな感じで話をしながら準備をし終わり、いよいよ料理を開始することにした。

さて、作り方はと。まさかここまで来てレシピが考え付かないなんてないよな?

だが、どれだけ考えてもレシピが頭に浮かんでこない。

なぜだ?まさか食材の鮮度を確かめられるぐらいのショボスキルじゃないよな?

俺が食材を見つめながら呆然としていると、


「食材確認、最大調理可能個数:2皿。コンフィを調理しますか?」


という声がした。


「お前ら今なんか行ったか?」

「いや?何も言ってないけど」


あれ?おかしいな。今確かに声がしたんだが。たしかコンフィが何とか。

すると、今度ははっきりと


「コンフィを調理しますか?」


と頭の中に声が響いた。

これはまさか、よくゲームなどで見る YES/NO 確認画面の音声バージョンのようなものでは?

気になるので試しに


「はい、調理します」


と言ってみた。

次の瞬間、一か所に集めていた食材がいきなり光りだした。

皆が啞然としていると、食材たちがまるで生きているかのようにうねりだし、数秒のうちに料理に変身した。


「「「......」」」

「へ?」

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