2023年手放してすっきりしたもの

 正直、そんな思い切ったものを手放してはいない。ただ、他人から見ればそうでも、自分の中ではようやく手放せた、やっと手放す気持ちになれた、というものがある。本人としては、大きな前進だ。

 そういう個人的に手放してすっきりしたものを紹介したい。


●●紺色のスカート●●

 スーツを数年前に捨てた。持っていない。仕事では制服を着用するし、スーツを着る機会がないからだ。

 紺色のスカートは、ジャケットと合わせればスーツに準ずる服装になれると思い、手放せずにいた。

 今の私としては、スカートの丈はもう少し長いほうがいい。けれども、仕事で急にスーツが必要になったら、と考えると手放せなかった。


 そもそも、である。


 私はジャケットを持っていない。何がジャケットと合わせれば、だ。まあ、カーディガンでギリなんとかなるかなあ、みたいな心持ちでいた。

 スーツを手放して数年、必要に迫られたことはない。おそらく日の目は見ないだろう。もしも、万が一、急遽、必要になるようなことがあれば、買いに行けばよい。イオンでも青山でもアオキでもユニクロでも。その日のうちに入手できるだろう。

 そう思い、ようやく手放せた。


●●A4の入る黒いバッグ●●

 大学入学式を前に、買ってもらったものだったと思う。大学の入学式や、就活の際にも使用していた。とはいえ、ここ数年、いや、おそらく十年以上使っていないのではないか。しばらく使っていなかったせいで、クローゼットの上に置いてあることすら、少し忘れていた。


 就活の途中で別のバッグを使うようになったが、社会人になってからも、転職活動のときは使ったような気もする。

 高級ブランドではないが、ちゃんとしたブランドのもので、つくりもとてもしっかりしている。ずっと使えるようなシンプルなデザインでもある。


 だがしかし、非常に重い。加えてなぜかバッグの前面が内側に反っている。使い方の問題か。中身を詰めておけばわからなくはなるが。

 日々肩こりに悩まされている私としては、重すぎてどうにも手が伸びない。親に買ってもらったものなので心は痛むが、使われず、クローゼットの隅に眠るバッグは憐れだ。


 手放す決意を固め、リサイクルショップに持っていった。値段はつかないと覚悟していたが、意外にも値段がついた。私がリサイクルショップに持ち込むのは罪悪感を和らげるためで、お金はおまけみたいなものだが、それでも値段がつけば嬉しい。

 誰かの手に渡り、大切に使ってもらえることを願っている。


●●おしゃれなパンプス●●

 私の足は残念な形で、なかなか合う靴に出会えないし、履けても残念なかんじになることが多い。そのため、合う靴があると買ってしまっていた歴史がある。

 それらの靴は履き倒して段々と数が減り、今は買うことに高めのハードルを設けているのでゆるやかに数を減らしている。明らかに汚い靴や、高いヒールで履かないものは手放したということも要因だ。

 それでも、いつ合う靴に出会えるかわからないこともあり、履きつぶし用の靴のほか、スニーカーや数足のパンプスを残している。


 中でも比較的出しやすい場所に入っているローヒールのパンプスがあった。たまにはおしゃれにパンプスを履きたいときもある。そういうとき、手近で出しやすいこのパンプスが登場しがちだった。

 上品なグリーンのチェック柄で、かわいくて気に入っていた。


 しかしながら、履くと足が痛くなる。靴下やタイツとの相性が悪かったのかとも思っていたが、思い返せば毎回、履いているとかかとや甲が赤くなり、どうも靴ずれしている気がする。もはや靴下の問題ではないだろう。

 足が痛くなる靴なんて、履きたくない。それなりに歩きやすくはあるが、靴ずれするのは嫌だ。普段車移動の私はもともとそんなに歩くわけではないが、デザインがかわいくて手放しがたいので、特に歩かない軽い買い物の際に履いてみたこともある。それでも甲は赤くなる。


 おしゃれは我慢、などの精神は私には皆無なので手放した。こちらもリサイクルショップで値段がついた。誰かの足元をおしゃれに彩ってくれたら嬉しい。


●●某少年漫画全28巻●●

 アニメ化・実写映画化した某有名少年漫画である。たしか、古本屋で全巻セットで買ったものだったかと思う。

 何度も読み返したし、収集癖のある私としては、おさえておくべく漫画を所有している、ということも意味のあることだった。

 ただ、ここ数年は読み返すこともなく、読み返す予定もなく、読み返したいという欲求もなかった。あるのは、漫画好きとして持っておくべきものを持っているという、満足感だった。


 おもしろかったし好きな漫画だ、という気持ちがあり、好きなシーンなどもある。また読み返したいという気持ちもあり、手放すことを考えることはあっても、結局手放す決意はできなかった。

 だったのだけれども、本当にふとしたときに、もういいかな、と思えた。時が満ちた、としか思えないような、自分でも驚くくらい自然に、突然のことだった。

 一時の気の迷いかとも思ったが気は変わらなかったので、すっきりとした気持ちで手放すことができた。


 余談だが値段がつかなくても引き取ってもらえればいいやという気持ちで古本屋に持っていったら、値段がついた。誰かに託せる機会を得て、思いがけずありがたかった。


●●その他●●

 ああ、やっと手放す決断ができた、というもの以外にも、ちまちま捨て活をした。


 着ていなかったブラウスやスカート、何年も着てもやもやポイントがあったニット、シミを発見したカットソーなど、衣服はあきらかに買い取りしてもらえないものは捨て、それ以外はリサイクルショップに持ち込んだ。

 これらはおそらく15点くらいはあったかと思うのだが、値段がついたのは4点ほどだったと思う。何に値段がついたのかはよく確認しなかったが、そのまま全部引き取ってもらえたのですっきりした。


 途中から図書館本にシフトしてしまった途中まで買っていた文庫や、学生時代に第二外国語で選択した中国語の辞書、使っていないレシピ本など、ちまちま手放した。

 なんとなく手放せないCD類も抜粋していくつか手放した。それから昔、好きなアーティストのCD(シングル)を大人だからと調子にのって、通常盤、初回限定盤A、Bと三種買っていたことがある。一度手にしたものは手放しがたく、まずは通常盤だけは手放した。今は悩んで選び抜いた一枚しか買わないようにしている。

 こちらも古本屋に持ち込んだ。本は値段がつかなかったのは1点くらいだったが、CDはそこまで古いものじゃないものでも値段がつかないものもあった。それでも自分で処分することを考えると、楽ができたと思う。


 そのほかには使わないサンプルは捨て、使えるものは今すぐ使う。インクの出ないペンを捨てる。なぜか増殖していくクリアファイルの数を減らす。このスペースと決めて、捨て活をする。そんなちまちましたことをした。

 微々たることではあるが、やらないよりはいいはずだと信じている。

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