第2話 反抗期の中学生
寝ているA(新人)の背中を、ちょっとだけを叩いてみました。
しかし起きません。
少し心配になってきました。
(もしかしたら体調が悪いのか?)
15分後、ゆっくり起き上がりました。大きく伸びをしています。
私:「すこし寝てたみたいだけど、体調悪い?」
A:「いえ、大丈夫です。ちょっと休憩してました。」
私:「そっか。眠い気持ちはわかるんだけど、机に伏せて寝られると心配になっちゃうな…。今度から眠いとき教えてくれる?一緒にコンビニ行こう。」
A:「…はい。」
Aは不満そうに返事をしてきました。
きっと内心『こいつうるさいな』と思っていたことでしょう。
周りの目を気にしないA、もはやちょっと羨ましいです。
そんなこんなで8月になりました。
私もAも、お盆に合わせて夏休みを取ることにしました。
-夏休み明けのある日-
お盆明け、朝出社するだけで汗だくになります。
そんな私の目に飛び込んだのは、シャツの
間違えました。出勤してきたAでした。
※ちなみにAは男性です。クールビズでジャケットは着てません。
会社員の男性がシャツ全出しで出社する姿を見るのは初めてでした。
本当に周りの目が気にならないタイプなんだな~と、しみじみ思います。
朝イチで注意するのは気が重いですが、とにかくAと話そうとしました。
(だらしなく見えるのはよくない。注意しなくては!)
私:「おはよう。シャツ出てるけど、暑いの?」
A:「暑いっすね。」
私:「暑いよね~。でも、会社にいるときはズボンに入れたほうがいいんじゃないかな。それか、ポロシャツにするとか…。」
A:「いえ、大丈夫です。」
(何が大丈夫なんだろう。もうなんか怖い…)
その日以降も、Aはシャツの裾をしまうことはありませんでした。
まわりの先輩社員からも、「新人、なんか中学生みたいな格好してない?」
と言われてしまいました。
(おっしゃるとおりです。おそらく中身も…。)
そしてもう一つ、別の問題が。
Aは最近、始業時刻に10分程度遅刻するようになりました。5日連続です。
夏休み明けで生活が乱れてしまっているのかもしれません。
本人としてはたった10分かもしれませんが、危険信号です。
最初に遅刻してきたとき、もちろん注意しました。電車遅延とのことでした。
まわりの先輩社員からも、
「まだAは来てないのか。連絡はあったの?」と聞かれてしまいました。
(連絡ないんですよね。してほしいとは言ってるのですが…。)
私:「最近遅刻が続いているけど、どうしたの?電車遅延?」
A:「間に合うように家を出てますけど、満員電車でいつも乗れないので、だいたい1本後のやつに乗ってます。」
また斜め上の回答がきました。
(うん。素直でよろしい。)
私:「たしかに朝電車すごく混むよね。わかる!でも、このままだと毎日遅刻してる人になっちゃうよー。やっぱり間に合うように来てほしいな。」
A:「あー、はい。」
私:「うん。あと、遅刻するって思ったらなるべく早く連絡してくれると助かる!よろしくね!」
A:「…。ハイ。」
炭酸の抜けるような返事とともに、Aは小さく頷きました。
服装の件といい、遅刻の件といい、私の言葉はAに響いていないようでした。
注意されたことに対して、悪びれる様子がありません。
まるで反抗期の中学生と生活指導の先生といったかんじでしょうか。
(私、なめられているのか?たしかに年齢も大して変わらないけど…。)
まだ学生気分なのでしょう。それでも少しずつ会社生活に慣れるしかないのです。
(モヤモヤするけど、気にしてても仕方ない!さあ仕事始めるか~。)
自分の作業に戻ろうとしたとき、最も恐れていた言葉が降りかかりました。
A:「あの、在宅勤務っていつからできるんですか。」
自由すぎる新人育成奮闘記~もっとうまくサボってよ~ 久遠かすみ @quokka_88
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