自由すぎる新人育成奮闘記~もっとうまくサボってよ~

久遠かすみ

第1話 新人登場

 これは私が新入社員の指導員を担当したときの話です。

 きっとどの会社でもよくある(?)新人奮闘記です。

 気軽に読んでくださると幸いです。


 -コロナ渦の制限も徐々に落ち着き始める6月頃-


 私は来月から配属される新人の指導員に任命されました。

 年齢的にそろそろだろうと思っていました。

(ついに、私に回ってきたか…!まぁみんな通る道だし、頑張ろ。)

 軽く前向きに引き受けました。

 新人どんな子かな~なんて、わくわくしていました。


 このときはまだ、新人が自由人すぎるモンスターだったなんて、1ミリも想像もしていませんでした。


 -7月1日-

 新入社員の顔合わせに向かいました。


 担当する新人(以降Aと呼びます)は、有名大学院を卒業したエリート。

 第一印象は、まじめでおとなしそうな好青年といったかんじ。

 趣味が料理とのことなので、得意料理を聞いてみました。

 A:「肉を焼くことが得意です。」

 斜め上の回答に若干困惑しましたが、ステーキを焼くのが得意ってことなんだろうと、勝手に解釈しました。


 -7月2日-

 配属先での出社がスタート。マンツーマンで仕事を教えます。

 PCのセットアップや関係者への挨拶まわり、資料読み込みなどをさせました。


 特に問題はありません。が、正直言うと『もう少し明るく元気だといいな~』と思うことはありました。

 しかし、配属直後は誰でも緊張するものです。

『まじめにやってくれればそれでいい!』という思いで見守りました。


 -配属1週間後-

 ある午後の昼下がり。15時を過ぎた頃。

 お昼を食べた後、ものすごい眠気に襲われること、ありますよね。


 隣に座るAの頭が前後に揺れています。多分、夢の中です。

(資料ばっかり読んでいると眠いよな~仕方ないか)

 私は気になりながらも見守ることにしました。


 その時です。

 パタン。Aはノートパソコンを閉じ、机に突っ伏つっぷして寝てしまいました。


(えええええ!寝ちゃったよ!!いくらなんでもいさぎよすぎる!!)

 驚きで5秒くらい固まりました。


 座席のまわりには他の社員もいます。

 なんならここは顧客先の執務室しつむしつです。普通にお客さんもいます。

(挨拶まわりをしたときに説明したし、Aもわかっているはず…だよね?)


 隣でスヤスヤ眠るAに目をやると、変な汗が出てきます。

 心臓バクバクです。仕事をしていた手が止まります。

 周りの社員の視線も感じます。

(どうしよう、どう起こそう。お願いだから早く起きて~!!)

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