11 優等生は夜に打ち明けられる⑵
……姉の頑張りは、姉の努力はやがて姉を蝕み、そして心を壊した。姉はそれによって、自殺をしたんだ。
ショックだった。私は自分の身を守るのに精一杯で、姉のことを考えてはいなかったんだ。
「お姉ちゃん、ごめん、ごめんね!」
手紙を読んだ私は、一晩中泣いてたよ。泣いて泣いて泣いて……朝になったら、涙が出てこなくなるくらい。
そうして気がつけば私は泣き疲れて眠っていなんだ。朝、部屋のドアをノックする音で気が付いたんだ。
部屋に入ってきたのは父親と母親だった。2人の顔は暗くて、2人も姉の死を嘆いているんだと思ったんだ。姉は手紙に「両親からの愛情はなかった。あったのは期待だけだった」と書いていたが、両親もきっと姉には愛情があったんだって私は思った。いやっそう思いたかったのかもしれない。
「夜」
父親は私の名前を呼び、腕を組んで言ったんだ。
「お前は、"姉の代わりにならなくてはいけない。姉の代わりに医者になり、そして高額歴の男と結婚するんだ"。だから、今日からお前を鍛えることにする」って、そう言ったんだ。
私はショックだった。父親と母親は姉の言う通り姉のことを考えてなんかいなかったんだ。
ただ姉を"自分たちの自慢"にしたかっただけなんだ。姉の言う通り、そこには愛情はなかったんだ。
私は両親に言ったよ。声が枯れるくらい大きな声で。
「お姉ちゃんが居なくなったのに、よくそんなことが言えるね! お姉ちゃんのことなんて、どうでもいいの!!」
「当たり前だろ。あれは失敗作だったんだ。失敗作のことについて考えるだけ時間の無駄だ。それよりもお前を鍛えることの方が重要だ」
父親は姉を「失敗作」と言い、母親はそれを黙認していた。私はうちの両親がヤバイということを再認識したよ。
「今日からお前の部屋を塞がせてもらう。窓や扉も全部な。アイツみたいに飛び降りされても困るからな。部屋ではみっちり勉強をしてもらうぞ」
それから1年、私は部屋に監禁されたよ。窓は塞がれ、扉には外から頑丈な鍵がつけられて、トイレとかお風呂の時しか出してもらえなかった。部屋には監視カメラがつけられて、学校から帰るとすぐ監禁され、母親に監視されたよ。
正直な話、私は姉を「失敗作」だと言った時点で逃げればよかったんだ……けど、逃げられなかったんだ。頼る人なんて居なかった、私の世界は両親と姉という小さな世界だった。逃げてどうなる? 衝動的に逃げて、野垂れ死ぬだけだ。
私は生きるために、必死で両親の言いなりになったよ。矛盾しているかもしれないけどさ。
……私は姉と同じになった。姉と同じように生きるために、両親に従ったんだ。従って、必死に勉強して……でも姉のように上手くはいかなかった。暴言や暴力で精神がズタボロだった。今まで耐えられたのは姉が居たからだ。姉が居たから私は耐えられたんだ。
限界が来た私は、姉と同じようにこの世からいなくなりたかった。
けど、姉の手紙のことを思い出したんだ。姉の手紙には最後、こう書いてあった。「生きて、幸せになって」って。私な決意した。姉に言われた通り、死ぬ気で生きるしかないって。
私はある計画を立てた。それはこの部屋から抜け出す唯一の方法……家出だった。
トイレに行くフリをして、保険証とか大事なものだけ持って私は家を飛び出したんだ。
どこでもいい、どこか遠い場所に行こうって。そして辿り着いたのが、この繁華街だったんだ。
この繁華街の話は、クラスメイトたちが話していたのを聞いて知った場所だった。
家出をした子どもたちが集まる場所だってことをね。だから、私はここを選んだんだ。
最初の1ヶ月頃は、大変だったよ。持っている僅かなお金が無くなりそうだったから、どこかでバイトしないといけなかった。昼間はバイトを探し、夜はぶらぶら歩いて。
バイトが決まると朝から晩まで働いてなんとかお金を稼いで、なんとかバイト先の紹介で安いアパートを借りれたんだ。
アパートを借りられた時、初めて落ち着けたんだ。両親からようやく自立できたってね。
私はここで生きていこうって決めたんだ。
朝から晩までバイトをして、そしてアパートで寝て……そんな暮らしを続けていたんだ。
けどそんなある時、両親がこの繁華街にやってきたんだ。
なんでも家出した子どもの特集をしてる番組がやっていて、その映像の中に私が居たらしい。うかつだったって思ったよ。まさか、そんなことがあるんだってね。
両親は私を見つけて言ったんだ。
「お前は高収入の男に嫁ぐことになった。だから、お前を連れ帰る」ってね。
私はその場から逃げ出したよ。両親の掴んだ手を振り払ってね。
両親から逃げながら私は、思ったよ。早くここから逃げるしかないって。でも、私は逃げたくなかったんだ。ようやく見つけたこの場所は私にとっての"居場所"だったんだ。苦労して、ようやくこの場所に落ち着けたのに、どうして私が逃げないといけないのかって……。
そこで私はある方法を思いついたんだ。
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