第4話 【ダザイ】の死後の評価

それは彼が死んで75年後の世界であった。

「ッツ!?」

彼と彼に関する本が大量に並べられている。

彼の友人たちの追悼文が彼の脳裏に走る

国語の教科書に彼の著作【ハシレ・めろす】が掲載されていた。

彼が死んだ日は桜桃忌と呼ばれ多数の人間が彼の墓参りに訪れている様子……彼自身をモデルにした漫画や映画、小説が多数存在こと……

何よりも【ナツメ・ソウセキ】の【ココロ】に並んで【ニンゲン・シッカク】がベストセラーになってることが彼の心を揺さぶるのであった。

「 わたしの小説がこんなにも多くの人の心を……」

と一人の文士として、心に火が灯るのであった。

「ジュフィアとやら、これは現実なのか?」

聞く【ダザイ】なのであった。

「ああ、そうさ」

とシガーをふかしながらこの女カウボーイはいうのだった。

「おや……お前さん泣いてるのかい……」

そう言うとうつむく【ダザイ】の背中を撫でるのだ。

(ここまで、多くの人の心を動かしていたとは……)

と思わず泣き出してしまう【ダザイ】なのだった。

(文士冥利につきる)

と言う訳なのであった。

「わたしはもう、向こうの世界には戻れないのか?」

しゃくり声をあげながら聞く【ダザイ】

「当たり前さ……あんたは死んでしまったんだ、いっちゃあ、なんだけどあんな死にかたをした事によって名声を得られたようなところがあるんだぜ」

確かに向こうの世界では自分は【死にたがり】としての印象キャラクターを持たれているらしかった。

(確かにあんな死にかたをしたけどさぁ……)

あれは山崎富栄とあんな死にかたをしたけど……彼としてはいつもと同じように同情を買われようと、自殺未遂に留めるつもりであった。だけど……スタコラさっちゃんときたら本気にして、睡眠薬を大量に飲んだ彼はズルズルと引きずられる様に……して……と言う訳であった。

(もっと生きて書きたい)

と思わせるのであった。

その時であった。

ガサガサと直ぐ側の草陰が動いたのであった。

「おや、何やらいい匂いがするぞ……」

と呟く声が聞こえた。

その姿を認めると【ダザイ】は叫ぶのであった。

「あっ、お前は……」

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