サンベリーナの大冒険


 サンベリーナはとても小さな女の子。どれくらい小さいかといいますと、彼女のドレスがチューリップの花びらでこしらえられているというくらいに小さいのです。

 今日もサンベリーナは八枚の花びらでできたスカートをはためかせ、大きな大きな世界を冒険します。

「わっひゃあ!」

 小さなサンベリーナは大きくて小さな声を張り上げます。大きな者たちばかりの世界ではたくさんの自己主張をしないと、小さなサンベリーナは見つけてもらえないからです。見つけてもらえないままだと間違って大きな誰かに踏まれちゃうかもしれません。そんなことのないようにサンベリーナはいつもいつも元気いっぱいに叫ぶのです。

「わあ! カエルさんカエルさん! 今日も泳ぎがお上手なのね!」

 湖で優雅に泳いでいるカエルさんに声をかけます。カエルさんのほうはすこしだけばつが悪いような顔をして手を振ってこたえるだけでした。

 サンベリーナも大きく手を振って飛び跳ねます。ジャンプしているとなんだか大きくなった気になるのでサンベリーナはだいたい意味もなく飛び跳ねていることが多いのでした。

「あっ、ツバメさん! 今日も重そうなものをくわえているのね! どちらにおでかけ?」

 なにやらとっても大きくて重そうなものを運ぶツバメさんに声を張り上げます。(もちろんジャンプもしながら)

 ずっと高くを飛んでいたツバメさんでしたが、どうやらサンベリーナには気づいたようで、ついちゅんちゅんと歌を歌ってしまいました。

 するともちろんくわえていた大きくて重いものがくちばしから落ちてしまいます。それ地面にぶつかったとたん大きな音とともにサンベリーナの身体が宙に跳ねあがりました。

「わわわっ! あっははははっ!」

 すこしだけ驚いたサンベリーナでしたが持ち前の明るさで彼女はそのおっきなジャンプを楽しんだのでした。それにいつものジャンプよりもずっと大きくなれた気がしたので嬉しくもあったのです。

 その大きなジャンプの着地と同時にツバメさんもサンベリーナのそばに降り立ちました。申し訳なさそうに彼はちゅんちゅんと歌います。

「気をつけてね、ツバメさん!」

 そう言うとサンベリーナはツバメさんの頭をなでてやりました。ツバメさんは照れくさそうにちゅんちゅん歌います。

 それからツバメさんは重そうな荷物を重そうに持ち上げ飛んでいきました。それをサンベリーナはお空を飛ぶかのごとく大きく飛び跳ねながら見送ります。今日もいっぱい、たいへんな大冒険をしてしまいました。

 そう思ってご満悦な顔でサンベリーナは帰っていくのでした。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る