第13話

マリアは考える。魔王様は本当に変わってきたと。見た目の少女の姿のちんちくりん、見た目の変化ではなく、心の変化だ。マリアが昔を思い出す。

「……魔王様、お休みくださいませ」

 ある晩の夜遅く、マリアはまだ起きている魔王に声を掛ける。

「どうして……どうしてなんだ!」

 魔王はマリアが部屋に入ってきたことに気がつかず、ただ項垂れていた。

「魔王様、夜遅くですよ」

「ん?あぁ、マリアか……」

 再びマリアが声を掛ける。魔王はマリアの存在に気がつくとポツリと呟いた。

「魔王様、何かに集中できることは素晴らしいのですが、魔王様自身の体を大切にしてください」

 マリアは今の状態の魔王に心配の声を掛ける。魔王は振り返ると焦点の合ってない目でジッとマリアを見つめる。それがマリアには虚空を眺めているように感じた。

「……わかった」

 魔王が頷きながらいう。マリアは安心の吐息を吐き出した。しかし魔王はすぐにパソコンに向かった。

「今の作業がキリのいい所までいったらね」

 魔王が言う。マリアはそんな態度の魔王に堪忍袋の尾が切れたのか声を荒げて言う。

「魔王様!いい加減にしてください!」

 マリアは魔王の肩を掴み揺する。

「魔王様の体は魔王様の為だけのものではないんですよ!多くの人が魔王様を慕いついてくる道標なんですよ!」

 マリアの声は荒い。それだけマリアは魔王の事を思っていっている。そんなマリアの好意を無碍にするかのように魔王はマリアの手を払った。

「わかっているよ」

「わかっていません!」

「わかっているよ!」

 魔王が声を荒げて言う。

「わかっているさ!わかっているから悩んで苦労して!お金を作ろうとしているんだよ!誰かを守る為に、人と戦う為に物資が必要だから苦労しているんだよ!」

 魔王の心象だ。心情を吐き出している。マリアは今の状態の魔王を心配するも何も言えなくなった。

「じゃあ僕は作業に戻るから」

 魔王はそういうと作業に戻る。今度はマリアも止められなかった。

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