第14話

「まずは魔王が普段どんな風に動画を撮っているかを見たい」

 朝食の時間にテールが魔王に提案した言葉だ。

「動画を?」

「そう、動画を」

 テールの言葉に魔王が首をかしげた。

「今日はテールのアイデアが見れると思ったんだけど」

「あぁ、その前に魔王のがみたいだけだ」

 テールは頷きながら言う。

「ほら、俺だって違いが知りたいからな」

「あー、アドバイスの前と後って事?」

「そうそう」

 魔王がテールの言葉に納得したように頷く。

「うん、わかった!僕の華麗なる動画撮影を眼に焼き付けるがいい!」

「はは、お手柔らかに頼むよ」

「その後!テールの番だからね!」

 魔王はテールを指差して言ったのだった。


「皆さん!おはようございます!こんにちは!こんばんは!皆さん元気ですか!僕は今日も元気です!今日も一動画をやらせていただこうと思います!このチャンネルの主、配信魔王です!」

「長ったらしい」

 開口一番に否定をされる魔王。むっと頬を膨らませテールに抗議の視線を送る。

「どこか可笑しい所でも?」

「いや、単純に長いんだ」

 ふんっと勢い良く顔を横に振る魔王。

「いいじゃん別に!僕の番なんだから黙ってみてて!」

 魔王はそう言うと口上を続けた。テールは魔王に言われたとおり、黙ってみることに決めた。

「今日もエリザベスの紹介をしていきたいと思います!」

 魔王はそう言うとエリザベスにカメラを回す。

「エリザベスは今日も可愛いですね」

 そういう魔王の表情はだらけていた。また同じ状況が続くのかと落胆をしたテールだが魔王の次の行動で感心の声を漏らした。

「では今日はエリザベスと遊んでみたいと思います」

 エリザベスの行動が見れるのか。テールはそう考えうんうんと頷いている。

 魔王が何処からか取り出したのはボールだ。マリアが用意したのだろう。異世界でテニスボールと呼ばれる物だ。

「今日はこのボールをエリザベスに取って来て貰いたいと思います!」

 魔王はそう言うとビデオカメラをエリザベスと魔王が見えるように置いた。そしてぽーんとボールを放り投げる。

 わくわくとテールが見ている中、1秒、2秒とエリザベスが動かない状態が続く。1分経過した頃に、流石に魔王もまずいと思ったのかおろおろとし始めた。2分が経過した頃、テールが爆発した。

「芸を仕込んでからやれよ!」

「なっ!僕だって今日が初めてなんだよ!」

「始めてをぶっつけ本番でやるな!」

 テールの怒りはもっともだ。しかし納得をしていない魔王が言い返す。売り言葉に買い言葉、テールは魔王に言い返した。

「これじゃ初日と何も変わってないじゃないか!」

「変わったよ!ボール使ってるじゃん!」

「ボールを使ってもエリザベス動かないんじゃ意味ないだろ!」

「じゃあテールが取ってくればいいじゃん!」

「俺が取りにいってどうする!」

 魔王とテール、二人とも真面目に口喧嘩をしているのだろうが傍から見れば子供の言い合いだ。マリアが呆れたように首を振った。

「大体こんなもんでいちゃもんつけて!テールは真面目にやる気があるの?」

「あるに決まってるからお前の動画の撮り方を見ているんだろ!お前こそやる気があるのか?」

「いったな!僕の方が真面目に動画に取り組んでいるからね!」

「魔王様、そこまでです」

 まだまだ続きそうな状況の中、マリアが魔王にストップをかける。魔王が口を閉じた。

「魔王様、テール様は真面目に私達の手伝いをしてくれているのです。キツイ言い方になるのもしかたありません」

 マリアが魔王を宥める。

「テール様も、魔王様の準備がいたらなかった部分はありますが、今日テール様が魔王様に提案したことなのですよ?」

 テールにも落ち着くようにと宥めるマリア。

 二人はマリアの言葉をしっかりと理解しているのだろう。気まずそうな表情に変わった。

「すまん、言い過ぎたかもしれない」

「僕の方も、頭に血が上っていたよ」

 二人は謝りあう。マリアはその様子を見て、満足した表情で頷いていた。

「では、お二方も仲直りしたようですし、次のコーナー、いってみます?」

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