第9話 コンプレックス
最後にオレが、アールファンタジアオンラインでラフネックスのチームメンバーとボイスチャットが出来ない理由、これを書いて話を締めくくろうと思う。
デュー、ガロウ、タカポン、皆楽しく、そして強い。
そんなラフネックスのチームメンバーとボイチャで喋れない、テキチャでのみ会話に参加しているその理由は、オレが重度の「吃音症(きつおんしょう)」だからなのだ。
吃音というのは簡単に言うと「どもる」こと。
例えば「こんにちは」「はじめまして」を発音しようとすると、
「こ、こ、こん、こんに、こんにちは」
「は、は、はじ、はじめ、はじめまして」
みたいになる。
この吃音、実は日常生活ではそれほど弊害にならないのだが、当然ながら接客業などはまず無理だし、営業職も恐らく無理だろう。
オレがバイトなのも吃音が故であったりする。
殆ど一人だけでこなせる作業、喋らなくて済む職場環境でのバイトなのだ。
この吃音症は別に緊張している訳だからではなく、どんな心情であっても発生する。
別の病気で掛かりつけの医者がいるのだが、この医者も軽い吃音症だったりする。なのでオレからすると吃音は特殊でも特別でもないのだが、外食の際にオーダーでどもったりすると、店員に嫌な顔をされたりもする。
それほど弊害にならない、と書いたが、些細には弊害がある。
そしてオレは、この吃音にコンプレックスを抱いてもいる。
まともに喋れない自分が嫌になることは茶飯事だし、その怒りだかをどこにぶつけていいのか判らない、なんてことも多々ある。
そんなオレ自身の問題をラフネックスのメンバー三人に向ける訳にはいかない。これこそオレがボイチャをやらない・やれない理由なのだ。
キーボードでのタッチタイプなら流暢に喋れるのだし、それでコミュニケーションが取れるのなら、どもってしまうボイチャよりもテキチャのほうがいいだろう、そんな判断だ。
だが、と思う。
今のメンバーなら、こんなオレでも受け入れてくれるかもしれない。
会話がままならないであろう光景を想像しつつも、そう思う。
それくらいの信頼度は今のメンバーにはある。昔のメンバーには無かったそれが、今はある。
後は一歩を踏み出し、ゲーム用マイク・ヘッドセットを購入するだけ。
その一歩が実に重たいが、いつか、そう遠くない日にきっと実現してみせる。
アールファンタジアオンラインでのどのミッションよりも、どの強敵よりも手強いこの一歩を、いつか。
それまでどうか、待っていてくれ、チームの皆。
――おわり
オレの作ったチームなのにオレが解任てどういうこと? @misaki21
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