第2話 ボイスチャット

 前述したが、新ラフネックスでの古参で実力者の一人であるガロウはテキチャ(テキストチャット)がとても苦手だ。

 理由は聞いていない。トラウマでもあるのか、単に読み辛いだけなのか。

 ともかくそういった訳でガロウはボイスチャットを利用する。

 幸い、オレ以外の二人にはボイチャ環境があるので、新しくなったラフネックスでの初ボイチャ会は賑やかかつ楽しいものとなった。

 無類の酒好きのデューは、旧バージョンのアールファンタジアオンラインとSNSでのイメージ通りに快活な紳士。

 新人のタカポンは、まだ人柄までは解らないが印象は悪くない。

 そしてガロウ。ガロウはちょっとクセのある人物だ、昔からだが。

 ゲーム攻略が進んでいるためか戦略がストイックで、パーティーリーダーにするとなかなかに難しいミッションを選択してくる。雑魚が落とすアイテムなども熟知しており、あそこが良い、あそこが駄目、と色々と助言をくれるのだが……。

 かく言うオレはというとマイクなどがないのでテキチャのみでパーティーに参加している。いわゆる聞き専だ。

 しかし三人が楽しく話していると、ついマイクが欲しくなる状況も多々あり、その衝動を抑えるのに必死だったりする。

 オレがマイクを使えない理由は……今は伏せておこう。

 さて、チームマスターなのにレベルが一番低いという状況をどうにかせねば、と、オレは一人でログインしてこそこそとメインモードを進めていた。すると案外とレベルが上がり、これならかなりのミッションをこなせそう、と言うところまで来た。

 そして時間になったので三人と合流。

 まずは上がったレベルを自慢する。皆から称賛され、オレはいい気分になる。

 続いて、ではもっと上げよう、と当然の流れで、雑魚敵が湧くエリアに向かう。

 ちなみにオレは射撃専門ジョブで、近接戦闘は極めて苦手だ。遠距離からチクチクするのが常套。

 ボイチャを聞きつつ、それにテキチャで応答し、いざ実戦。

 三人もいれば雑魚などものの数ではなく、しかし延々と湧いてくる。死ぬことはないが、さすがに疲れる。

 途中、トイレだ飲み物だ煙草だ、と離席を挟みつつ、攻略は続く。そして談笑も続く。

 オレは相変わらず他愛のない話題が好きで「デュー、今日は何を飲んでいる?」といった調子。デューは本当に良い人なのでそんな雑談にも付き合ってくれる。

 ゲームに限らず人柄というのは大事だな、そう思うひとときだ。

 タカポンも話題に乗ってくる。自分は下戸だ、と言った具合に。

 しかしガロウはこういう時、割と無口になりがちだった。ゲームに関係のない話題だと大抵こうだ。

 たかがゲームだ、遊び方は人それぞれだろう。が、楽しみ方も人それぞれだとオレは思う。

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