第3話 サブマスター

 ラフネックスのサブマスター、デューについて。

 彼は本当に良い人だった。

 だった、と過去形にしているが死別した訳ではないので。ボイチャで初対面? してそう確信したのだ。

 こよなく酒を愛し、まっとうな社会人をしており、何と言うのか大人の余裕のようなものが言葉の端々にある。

 スローな語り口もそれを増長させている。

 ゲーム内の戦闘でも案外とマイペースで、しかし輪を崩すことはせず、という絶妙なバランス感覚の持ち主。

 バイト三昧でヘロヘロなオレとは比べ物にならないくらい、デューにはゆとりがあった。

 初めてボイチャに参加した際に「乾杯」と酒を空けていたデューのSNS投稿には、酒のボトル画像も何度かあった。

 オレは下戸で文字通り一滴も飲めないので、こういう面も羨ましくあった。


 対してガロウとはボイチャ歴がそこそこある。

 アールファンタジアオンラインでは見た目を変えることができるのだが、ガロウはいつもヒヨコの着ぐるみを着用していて、だからなのかデューからは、チームのマスコットだ、と毎回言われていた。本人が好んでいるかは聞いたことはないが。

 ヒヨコの癖に、とは口が悪いがとにかく強い。

 選べるジョブの全部をレベルアップさせていて、ソロでもゲームを続けているのでガロウが死ぬ姿は見たことがない。

 かく言うオレは強敵に遭遇するたびに死ぬのだが。まあ死んでそれを蘇生させるのもゲームの一環だろう、とあまり気にしてはいないのだが、あまりに死に過ぎるとパーティーに迷惑がかかるので、出来る範囲でそれなりの装備を整えている。

 しかしこのアールファンタジアオンライン、やれることがとにかく膨大で、とても網羅は出来そうにないと諦めている。

 ガロウが強いのはこの辺りをきっちり網羅しているからなのだろうな、と思ったり。ヒヨコの癖に(二度目)。


 さて、半年ほど放置した挙句にチームマスターを解任されたオレの新天地、新しいラフネックスはまだ合計四人ということもあり……おっと、タカポンのことを言っていなかった。

 とりあえず解っている情報は愛煙家で実家暮らし、年齢は近い、くらいだろうか。百円ショップのマイクを使っているからなのかボイチャの音質がやや悪い以外、欠点らしきはない。

 社交もきちんとしており、テキチャへのレスポンスも良いし、二人だけで探索に出掛けたこともあるが何らストレスは感じなかった。

 ガロウが他ゲームから引っ張って来た方らしいが、ラフネックスには勿体ない逸材かもしれない。

 ということで戻り、新しいラフネックス……毎回「新しい」と書くのも面倒なのでラフネックス、で統一するが、メンバーに恵まれて良い滑り出しとなっていた。

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