第2話 あれから3年

 結局、俺の病気は主に心臓肥大による呼吸困難、高血圧、別に躁鬱で落ち着いたのだが、それからの通院生活は過酷だった。仕事に行けないのだから収入はない。


 暫くは失業保険でもと思ったが、失業保険というのは働ける状態の人がもらえる物で、そうで無いなら傷病手当。それでも期限はある。何時までも貰えるものではない。正確には1年6か月。


 前職の給料の8割だったかな? それがもらえるから生活は出来たが、通院には私の場合、公共交通機関が使えない。人ごみにいると吐き気やめまいがするので使えないのです。


 そうなるとタクシーということになり、通院に掛かる費用が結構なものになり、普通なら生活できる金額でも、圧迫される。勿論、子供の養育費もそれから出て行くのでさらにだ……。


 そんな状態だと、健康に良いものなんて食べることは出来ない。切り詰めると所は食費しかないのだ。


 そんな生活が続く中、何とか心臓の肥大は沈静化したので、これ以上の悪化は止められた。しかし、一度肥大した心臓は元には戻らないから、もう肉体を酷使する仕事には就けない。スーパーに買い物に行くのに500mぐらいで三度の休憩を入れなくてはいけない。


 それでも傷病手当が終わる頃には普通に歩くことは出来るようになった。必死に努力したのだ。昼間外に出ると人と会うから、夜中に外を歩いて体力をつけた。


 身体的には回復してきたのだが、精神的な物は逆に酷くなっていた。とにかく人に会えない。会っても目を合わせられないのだ。結局こんな状態だと働くこともできないので、市役所に相談に行った。


 病院の診断書もあるし、民生委員や市役所の調査でも問題ないと言うことで、生活保護が申請で来た。まさかこの俺が生活保護の世話になるなんて思ってもいなかった。


 しかし、これが本当に良かったのだ。病院に通う通院費が負担にならなくなっただけで、生活にゆとりが出来た。そうすることで精神的に楽になり、躁鬱の方も少しづつ改善されてきた。それでも人混みはやはり無理だから、仕事に就くなら在宅で出来る物を探した。大変だが頑張れば生活保護ぐらいは稼げる在宅の仕事を見つけた。


 保護費ぐらいであって当然内職に毛が生えたような仕事だ。今までのような生活は出来ない。だから足りない分だけを保護で賄い、それを継続することで病院の通院費は無料にして貰えた。


 言ってみれば部分保護ですね。そうやって生活を立て直そうと頑張って、3年、漸く普通に働けるようになりました。


 それからは、人とあまり関わらなくて済むような仕事を探しましたが、年齢が年齢ですので、そう簡単には見つかりません。結局は昼夜が逆さまになる警備の仕事ぐらいしかありませんでした。


 それでも保護を切って働けるし、通院も出来る。通勤用に原付バイクを知り合いから安く譲ってもらったから、それで通院も出来るようになった。


 しかし、人生上手くいかない物で、昼夜が逆さまの職業は若い人なら問題ないし、健康な人なら中高年でも問題ないのでしょうが、私の場合、持病の心臓肥大と躁鬱もあります。結果、自律神経がおかしくなり、血圧の乱高下が始まってしまったのです。




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