第5話 チャリン
書き込みをしたのは『藤原ゆうた』だった。
アカウント取り直したのに、なんでまたコイツがいるんだよ。
じつは追跡されてるのはこっちなんじゃねえの?
いや、さすがにそれはない。
地球人の科学力じゃ不可能だ。
俺の名前で検索しやがったか? どうするよ、コイツ。
ピンポイントレーザー射撃で書き込み端末を破壊してやろうか?
などと思っていると、チャリンと投げ銭がきた。
藤原ゆうたからだ。
しかも、たった百円。
……くそう、バカにしやがって!
レーザーで家ごと焼いてやる!!
と、スイッチに手を伸ばしかけたところで、チャンネル登録者数が1増えた。
どうやら藤原ゆうたがチャンネル登録したようだ。
……う~ん。これはどう判断すべきか。
いちおう応援するつもりはあるのか?
ブチ殺すのは、ちょっと保留にしておこう。
まあ、俺が殺さなくても一年後には死ぬしな。
見るからに貧乏人そうだし、投げ銭合戦になれば勝ち目もないだろう。
アホだな~。今、十万ぐらい入れとけばまだ可能性があるのに。
よし、ゆうたの件はこれでよし。
テラフォーミングの続きは明日するか。
――そして、次の日。
「今日は気圧を上げる。火星には凍った二酸化炭素がたんまりとあるから、コイツで溶かしてやるんだ」
そう言ってサンシャイン豆太郎を指さす。
このサンシャイン豆太郎はまるで小型の太陽かのように熱を発する装置だ。
「それともうひとつ!」
今回使うのはもう一個。穴を掘る機械だ。
その名もニョロリンドリル君。
ドライアイスアイスがあるのは地面の下、そのさらに下には氷がある。
だからニョロリンドリル君で、一気に氷まで穴を開ける。
そこへサンシャイン豆太郎を放り込むわけだな。
氷は解けて水、そして、お湯になる。そのお湯でライアイスを爆発的に溶かしてやろうって計画だ。
「視聴者の諸君、わかったか? たぶん今、画面横の方に説明がでてるはずだから」
このような説明も瞬時にAIが編集してアップしてくれる。俺がわざわざ喋らなくていいから楽だ。地球人どもにはしばらくムリな技術だな。
「じゃあ、さっそく……」
と、ここで書き込みがきた。
作業の手を止めて、確認する。ライブ配信ならではの対応だ。
なになに。
”ダサい商品名だなあ”
なんだと!
ダサい? このスタイリッシュな商品名が!?
「おい! ダサい商品名ってなんだよ。一生懸命考えたんだぞ!」
地球人にも親しみやすいように俺が考えた。それを否定しやがって。
「こんなこと書くのは、おまえだな。藤原ゆうた。わかってんだぞ!」
と言って発信元を追跡させる。コンマ数秒、コンピューターは発信者の住所氏名を割り出した。
「あれ? 福岡県在住の土井りゅうせい? ゆうたじゃないの?」
でてきたのは別人だった。ゆうたじゃなかった。
”なんで俺の名前が……”
”え? 書き込みに反応してる?”
”マジ? これマジもんのライブ映像なの?”
つぎつぎと書き込みがきた。どうやら複数人が書いてるもよう。
「だから、言っただろうが。ゲームじゃねえんだよ。ほんとうに火星をテラフォーミングしてんの!」
※お知らせ。
この作品は『宇宙人からの贈り物、品種改良BOX。~ポンコツメカが農業で地球を救うって? いや俺はムリだと思う~』のスピンオフです。
チョイ役で登場した宇宙人を主人公とした短~中編。
本編の主人公が存在しない世界線。10話~20話ぐらいで、キリよく終わろうと思っています。
本編は地球人、草刈実が主人公。オクト・キュノッポにもらった不思議なメカと生活するコメディー作品です。
ポンコツ。でもなんかカワイイ。そんなキャラクターを目指しました。
一章は農業。二章では隕石墜落にどうあがらうか、ポストアポカリプト直前のお話です。
ぜひご覧ください。
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