第4話 電力を確保しよう

 パスカルまもる君を作動させるには電力がいる。

 というか、俺が宇宙船に積んでる装置のほとんどは電力がいる。


 自前でエネルギーを生み出す装置は高いのだ。辺境には似つかわしくない。

 だから持ってこなかった。

 チッ、めんどくせえなあ。


 まあいいや。とっとと始めちまおう。

 クソダサ太陽光発電装置、ピカっとキバル君を倉庫から取り出す。


「あ~、動画を見ている諸君! これが電力供給装置だ」


 そう言うと、ピカっとキバル君を宇宙船から蹴落とした。

 キバル君はうまく着地できずに斜面をコロコロと転がったが、まあいいだろう。

 そのうちどこかで止まる。

 あとは勝手に集光パネルが開いて、これまた勝手に範囲内の装置に送電してくれるはずだ。


「よし! 今回はこれぐらいにしておくか。つぎは地中にあるドライアイスを気化させて大気を生み出す。火星には凍った二酸化炭素が山ほどあるからな! じゃあな。次回も見てくれよ。チャンネル登録と高評価忘れずにな!!」


 バッチリ決まった。

 これで登録者、大量ゲットのはずだ。

 そのうち投げ銭もいっぱい入るだろう。


 ちなみに、いまの登録者数はいくつだ?

 確認してみる。


 ……10?

 お、いいじゃないか。

 いま映像をアップしたばかりにしては、まずまずの伸びだ。

 実際に映像を見たらさらに伸びるだろう。


 なんたって、超リアルな映像だからな。

 それを高性能カメラで間近にとらえてる。

 地球人のテクノロジーじゃ絶対ムリだ。


 お! 登録者が11人に増えた。

 いいねえ、いいねえ。伸びしろあるよ!


 ――なんて喜んでると、視聴者からコメントが来た。

 いいタイミングだ。気持ちも急上昇だな。

 で、なんて書いてあんのかな?


”ゲームの画像を勝手に使うのは違法ですよ”


 おい! ふざけんな! ゲームじゃねえよ。

 ちゃんと生の映像だよ。しかもリアルタイム。

 ムカつく気持ちを抑えながら返信する。


”ゲームではありません。実際の映像です”


 なんなら証拠を見せてやってもいい。

 初回限定だ。こんなことしてくれってリクエストにだって答えてやろう。

 そんな意気込みで反応を待った。

 すると、また書き込みがきた。


”言い訳は警察にしてください。通報しましたので”


 ファッッック!!

 コイツ、マジむかつく。

 どこのどいつだよ。追跡してやる。

 わずかコンマ数秒、宇宙船のコンピューターは発信者の住所名前を割り出した。

 書き込んだのは、東京都在住の『藤原ゆうた』だった。


 またお前か!!!

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