第3話 テラフォーミング

 もう一度アカウントを作った。

 はく奪されて一年間は再取得できませんみたいな警告がでたが、そこはハッキングで回避した。

 我らがテクノロジーにかかれば、この程度のセキュリティはないも同然なのだ。


 ちなみに金融機関をハッキングしてお金をせしめるのはナシだ。

 それは取り引きではなくテロリズム。

 あくまで俺は商人なのだ。


 よ~し、始めるぞ。


「テラフォーミングチャンネルを試聴の諸君しょくん、オクト・キュノッポだ。本日の二本目の動画は、火星をテラフォーミングしよう! だ」


 カメラに向かって話しかける。

 こいつは高性能自動撮影型カメラだ。俺を自動で追尾して撮影してくれる。

 宇宙空間だってヘッチャラだ。


 カメラは三台ある。

 俺をうつすカメラと、火星全体をうつすカメラ。そして、テラフォーミングの様子をうつすカメラだ。

 その映像は俺の宇宙船へと送られ、自動で編集されて地球の動画サービスにアップされる。

 もちろん、リアルタイムでだ。

 地球の動画サイトを学習したAIが、なんかいい感じに処理してくれるのだ。


 ちなみに一本目の動画は、しょっぱなBANを食らった内容をちょっとマイルドにしてアップした。

 ちゃんと投げ銭のルールを伝えとかなきゃならないからな。

 

「テラフォーミングでまず行うのは大気の調整だ。現在の火星の気圧は0.006。これを一に近づけなきゃならない。だが、こいつは難しいぞ。大気を生み出しても宇宙空間へ逃げていってしまうからだ。だからまず、大気が逃げないように装置が必要になってくる。そいつを稼働させるのが今回のミッションだ」


 ひとつの機械を指さす。

 これが今説明した大気保持装置、パスカルまもる君だ。これを火星の地軸に対しまっすぐにぶちこむ。


「発射!」


 宇宙船のドッグから、コロリンチョと転がったパスカルまもる君は、エンジン点火後、シュビビビビと飛んでいく。

 そして、火星の大地のええ感じのところにザクっと突き刺さった。


「よし! 成功!!」


 これで大気を地表にとどめることができるハズ。


「……あれ?」


 なんかおかしいな。

 稼働するとパスカルまもる君は、緑のラインが入るんじゃなかったっけ?

 ネズミ色のまんまなんだけど。

 なんでだ?


「あ! 電力か!?」


 そうだ、コイツ旧式だから電力がいるんだった。

 どしようかな?

 太陽光発電にするか? あれダセーから好きじゃないんだけど。

 まあ、いいか。

 同じくダセー地球人にはお似合いだしな!

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