※若干閲覧注意(人によっては不快に感じるかもしれないので) 小説家って、俳優なんですか?


 ちょいと、高校生の作家仲間が悩んでいるようだ。

 どうも、「作品」が注目されるのはいいが、「作者」である自分自身が注目されるのがあんまり得意ではないと。人からどう見られるかを気にして、作品を書けなくなってしまっていると。


 なるほど、難しい問題だ。一方で自分の中では贅沢な悩みだとも思ってしまう。本人は苦しんでいるだろうし、正面切って言ったら嫌な奴判定を食らってしまいそうだから、ここに書く。(これを呼んでも嫌いにならないで! ごめんね!)


 人は新しい本を探すとき、主に二つの方法で探す。


「ジャンル・タイトル・評価から受ける好みかどうかの印象」

もしくは

「誰が書いているか」


 もっと分かりやすく言えば「本」か「人」で選ぶ。


 「本」で選ぶのは分かりやすいだろう。自分の好きなジャンル。面白そうなタイトル・あらすじ。周りの評価が高い作品。

 この世の中に、書籍化されている本は1億2986万4880冊(2010年時点)あるとGoogleは言っている。web小説を合わせたら、途方もない数になるのは間違いない。その中から一冊一冊読んで好みのものを見つけるほど人間は暇じゃない。上記の選び方で本を選ぶのは当然だろう。


 では、「人」で選ぶとは? 簡潔に言えば、「作者:〇〇」と書いてあるだけで、その本を読もうと決断する選び方だ。

 当然、前作とはガラッとジャンルが変わっているかもしれない。もしかしたら前作まで短編集だったのが、今回から何巻にも渡って物語が展開される超大作かもしれない。

 それでも人は、「この作者なら面白い」と勝手にブランドを付けて読む動機とする。


 よく映画で「この俳優さんが演じてるから見る」というような、「作品」というより「人」のファンは多く見かけられる。

 自分の父親もその一人だ。(本田翼と浜辺南が好きと言って俺に作品を押し付けるのは止めてくれって言ってんだろ!)


 つまり、ブランド付けされた作者は、テレビで見るような俳優などと同じような扱いを、ファンから受けることになる。


 

 全世界の作家の皆さんに、まるで喧嘩を売るようなことを言ってしまうが、正直作家って、人前に立って何かするのが得意って人はおそらく少数派だと思う。

 根暗とは言わないが、目立つ、自分が注目される、そうゆう場面が苦手な人が多いと思っている。実際自分そのうちの一人だ。


 その代わり、人目に付かないところでコツコツ積み上げたり、何か一つに向ける集中力が高い人達が、小説を書いているのだと思っている。


 そんな作家が、急に自分の名前を上げられて、「期待」や「熱意」を向けられたら怯んでしまうのは間違いないと思う。

 それらもろもろ含めて、その仲間が悩んでいるのは凄く、凄く分かる。だが、正直他人にはどうしようもないから「頑張れ」としか言えない。


 そして同時に、こうも思う。「誇れ」と。


 作者に目が行くのは、その人が書く「本」が一定のラインを越えた、いわゆる一種の「名著」になっているからだ。

 「人間失格」「富岳百景」「女生徒」は太宰治の本だ。

 「坊ちゃん」「吾輩は猫である」「こころ」は夏目漱石の本だ。

 それらは「名著」として名が残ったから、「こんな素晴らしい本を書いたのは誰だ!?」となった訳だ。


 作者に目が行くとは、それだけその人が書く本が認められた証拠だ。だから、「誇れ」。

 きっと本人は、「大したことない」「自分はそんな熱意や期待を向ける価値のある人ではない」と言うかもしれない。だがあえて強く言おう。


 自分で決めるな。自己評価が低いのは自身の勝手だが、読者の、周りの人の目からの評価を受け取らない、謙遜するは逆に失礼だ。

 俺が応援している作者を、たとえ作者自身であろうと悪く言う、蔑むようなことを言うのは許せない。


「自分ではそう思いませんが、そのように評価していただいて光栄です。ありがとうございます」

 これでいい。これぐらいでいい。


 他人の評価と自己評価が乖離するなんて生きていれば何度でも経験することだ。

 自己評価より他人の評価が高いなんて、どれだけ素敵な勘違いなことか。


 自己評価より他人の評価が低い時なんて死にたくなる、実際自分はそれを3回味わった。(自意識過剰なガキだった頃が懐かしいよ)



【結論】

 結局この言葉に落ち着くよ。


「気にすんな。書きたいものを書け。それを読者も、一番望んでる」


 

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